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2019 年度 実績報告書

がん組織内環境の多色深部イメージングおよび空間分布制御型DDSの構築

研究課題

研究課題/領域番号 18H03535
研究機関長崎大学

研究代表者

川上 茂  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20322307)

研究分担者 萩森 政頼  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (40446125)
麓 伸太郎  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (70380988)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードドラッグデリバリーシステム / 多色深部イメージング / リポソーム / がん / ターゲティング
研究実績の概要

1)ペプチド修飾HFQ脂質の設計・合成とマイクロ流体デバイスを用いたリポソーム製造技術の開発
膵臓がん細胞指向性、膜透過性を有するペプチド修飾HFQ脂質の設計と合成を行い、スペーサーのペプチド配列の最適化を通じて、水に高分散性を示す新規ペプチド修飾HFQ脂質誘導体の合成に成功した。次に、マイクロ流体デバイス(超高速ナノ医薬作製装置)を用いて、新規HFQ脂質を含むリガンド修飾PEGリポソームの製造法の開発を行った。PEGリポソームと水に分散させた新規HFQ脂質をマイクロ流体法による後修飾により混合させることで、修飾前のPEGリポソームと粒度分布、ゼータ電位、多分散度 PdI (Polydispersity)がほぼ同等の値を示すリガンド修飾PEGリポソームの製造が可能であった。また、細胞結合実験により、これらのリポソームがリガンドペプチドの機能を有していることを確認した。
2)リポソームの腫瘍内空間分布の評価:
膵臓がん組織内環境とリポソームの粒子径の関係を解明するため、昨年度確立した多色深部イメージング系を用いて、通常の100nmの平均粒子径を有するPEGリポソームとマイクロ流体法を用いて製造した50nmの平均粒子径のPEGリポソームの間質が豊富な膵臓癌移植マウスにおける腫瘍組織内空間分布の可視化を行った。その結果、100nmのPEGリポソームは腫瘍深部への移行が妨げられるものの、50nmのPEGリポソームでは、腫瘍深部まで移行しており、PEGリポソームの平均粒子径が腫瘍深部移行の重要な因子である可能性が示された。一方、間質量の影響を明らかにするため、間質量が少ない大腸がん移植マウスを用いた解析を行った結果、平均粒子径の違う2つのPEGリポソーム間において腫瘍深部到達度に大きな差はみられず、がん間質量の違いがPEGリポソームの腫瘍内分布に影響している可能性が示された。また、間質除去については、解析の結果、完全に除去することは難しいことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)ペプチド修飾HFQ脂質の設計・合成とマイクロ流体デバイスを用いたリポソーム製造技術の開発については計画通り、2)リポソームの腫瘍内空間分布の評価については、リガンド修飾PEGリポソームの膵癌組織内空間分布の解析は遅れているものの、腫瘍組織深部到達に及ぼすPEGリポソームの粒子径の影響を明らかにすることができたことは期待以上の進展であった。多色深部イメージングではこれらの情報を組み合わせることで、間質が豊富なすい臓癌組織における深部移行型DDSの開発が円滑に行えるものと思われる。以上、本年度計画していた研究内容は概ね遂行することができたものと考えられる。

今後の研究の推進方策

抗がん剤であるドキソルビシン封入PEGリポソームを用いてさらに腫瘍内空間分布の解析を行う。また、間質を完全に除去することは難しいことが分かったため、間質が豊富なすい臓がんモデルマウスを用いて、超音波応答性ナノバブルや抗線維化薬を用いた間質の一部除去が、抗がん剤封入リポソームの腫瘍内分布の変化に及ぼす影響に視点をあてて、腫瘍組織内空間分布制御法の開発を進めたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 多色深部イメージングを利用した空間分布制御型ナノDDSの開発2020

    • 著者名/発表者名
      川上 茂、菅 忠明
    • 雑誌名

      薬学雑誌

      巻: 140 ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of direct sonoporation from a defined surface area of the peritoneum: evaluation of transfection characteristics in mice2019

    • 著者名/発表者名
      Koyo Nishimura, Keita Yonezawa, Shintaro Fumoto, Yusuke Miura, Masayori Hagimori, Koyo Nishida, and Shigeru Kawakam
    • 雑誌名

      Pharmaceutics

      巻: 11(5) ページ: 244

    • DOI

      https://doi.org/10.3390/pharmaceutics11050244

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] :Suppression effect on peritoneal fibrosis by HGF gene encoding CpG-free plasmid DNA using nanobubbles with ultrasound irradiation2019

    • 著者名/発表者名
      Koyo Nishimura, Maho Kawaguchi, Shintaro Fumoto, Shigeru Kawakami
    • 学会等名
      19th Symposium for Gene, Design and Delivery
    • 国際学会
  • [学会発表] リポソームの腫瘍深部送達を目的とする標的指向型Limit Sizeリポソームの開発2019

    • 著者名/発表者名
      菅 忠明、野田健太、杉本友里、増田智成、麓伸太郎、川上 茂
    • 学会等名
      日本薬剤学会 第34年会
  • [学会発表] 腹膜線維症病態時の組織構造と遺伝子発現分布の組織内空間的評価による腹腔内組織への超音波応答性DDSの開発2019

    • 著者名/発表者名
      西村光洋、小川昂輝、麓伸太郎、川上 茂
    • 学会等名
      第35回日本DDS学会学術集会
  • [学会発表] 膵臓癌細胞を標的としたHER2指向型KCC修飾エクソソーム製剤の開発2019

    • 著者名/発表者名
      杉本友里、菅 忠明、野田健太、山吉麻子、麓伸太郎、川上 茂
    • 学会等名
      日本核酸医薬学会第5回年会
  • [学会発表] 組織内動態および分布解析に基づく標的指向型DDSの開発戦略2019

    • 著者名/発表者名
      菅 忠明、小川昂輝、西村光洋、大山奈津子、加藤直也、増田智成、川上 茂
    • 学会等名
      長崎障害者支援再生医療研究会
  • [備考] 長崎大学生命医科学域 医薬品情報学分野

    • URL

      http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/arp/index-j.html

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公開日: 2021-01-27  

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