研究課題/領域番号 |
18H03539
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤枝 俊宣 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (70538735)
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研究分担者 |
太田 宏之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生理学, 助教 (20535190)
小林 正治 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40740147)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高分子ナノ薄膜 / インクジェット印刷 / ナノインク / 神経電極 / スパイク計測 / オプトジェネティクス / オプトロード / 無線計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、脳組織に対して神経電極の低侵襲な穿刺を目指すべく、柔らかい高分子ナノ薄膜とインクジェット印刷技術を組み合わせることで、フレキシブルな神経電極を開発する。平成30年度の成果は以下のとおりである。 (1)脳組織に穿刺可能な微小印刷電極からなる神経電極の作製:ナノ薄膜表面にインクジェット印刷にて微細配線(幅約50 um)を印刷した。ナノ薄膜の柔軟性を利用して、厚さ6 um,幅3 mmのシート形状を直径200-300 umの針状に成型した。次に、針先端部に電極構造を形成するため、カミソリ刃を利用して微小電極の露出を試みた。作製した神経電極のインピーダンスは800 kΩ(at 10 Hz)であり、単一神経細胞の計測に必要な値が得られた。 (2)単一神経細胞のスパイク計測:防衛医大の太田助教と連携して、神経電極をラット脳内に穿刺し、単一神経細胞のin vivoスパイク計測を試みた。マイクロCTにて脳内の電極構造を観察したところ、針状の電極構造を維持したまま脳内に留まる様子が認められた。さらに、直径500 umの光ファイバにシート状神経電極を巻き付けることで、神経細胞への光刺激と活動電位のその場計測が可能なオプトロードを開発した。ChR2発現ラットの海馬部に穿刺し、青色光 にて光刺激したところ、単一神経細胞由来のスパイクを計測することに成功した。 (3)小型無線機の作製:東京大学の小林准教授と連携して、小動物に搭載可能な小型で低消費電力な脳神経信号の無線伝送モジュールを開発した。このモジュールは、ナノ薄膜神経電極と接続可能であり、1 mV以下の微小電圧信号を増幅するアナログフロントエンドと、Bluetooth Low Energyによる無線通信機で構成されており、全体の大きさがわずか3.6 cm^3程度である。動物に干渉することなく、電池駆動で長時間の計測が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に計画していた微小印刷電極からなる神経電極の作製手法を新規に構築し、in vivoでの単一神経電位の計測やオプトロードの開発に成功した。現在は本手法を活用することで、脳表面に貼付可能なECoG電極の開発を進めている。さらに、平成31年度で予定している分子インプリントによる電極部の機能化にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究成果を基にして、分子インプリントによる電極部の機能化について検討する。分子インプリントについては、脳表面の浸出液中の神経伝達物質を補足すべくECoG電極への修飾を予定している。また、穿刺型や貼付型の神経電極を小型無線機と接続することで、神経電位の無線計測まで踏み込む予定である。
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