研究課題/領域番号 |
18H03540
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60438041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / DDS |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、DDS開発に必須のポリエチレングリコール(PEG)修飾における課題である、非効率的な細胞内取り込みと特異的抗体産生、すなわちPEGジレンマを克服するために、低分子親水性化合物Tris [2-Amino-2(hydroxymethyl)-1,3-propanediol](Tris)修飾脂質と腫瘍微弱低pH応答性ぺプチドSAPSを修飾したリポソームを構築することである。 2018年度は、Trisと脂質間のリンカーとしてコハク酸とグルタル酸の2種類のTris-脂質誘導体のTSLとTGLを各々組み込んだカチオン性リポソーム(TSL-lipoあるいはTGL-lipo)を構築した。TSL-lipoおよびTGL-lipoの物性を評価した結果、TSLあるいはTGLの修飾によって、カチオン性リポソームの正電荷の緩和が認められた。また、各々のリポソームの細胞内取り込みを評価した結果、PEG修飾体では細胞内取り込みが認められなかったが、TSLあるいはTGLを10 mol%修飾した場合ではカチオン性リポソームと同程度の細胞内取り込みを示し、TSLあるいはTGLの修飾率の増大に伴い取り込み効率の低下が認められた。さらに、低pHに応答して電荷の反転する機能性ペプチドSAPSを修飾したTSL-lipoおよびTGL-lipoの物性を評価した結果、pHに応答した粒子径および表面電荷の変化が認められた。また、これらのリポソームは低pH下で細胞内取り込みが2倍以上促進したことから、TSLおよびTGLは機能性ペプチドSAPSの機能を阻害せずに、リポソーム表面の改質可能な新規デバイスとして期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、開発する核酸キャリアーの基盤となるTris脂質誘導体と機能性ペプチドを搭載したリポソームを構築し、その物性変化および機能性を詳細に評価することができた。また、本キャリアー内に封入予定の機能性核酸によって、細胞死が誘導されることを確認した。一方、他の機能性ペプチドを修飾した場合の影響も含めてTris脂質誘導体修飾リポソームの物性ならびに機能性を慎重に評価したため、今年度キャリアー内に機能性核酸を封入する計画であったが、現在予備検討の段階であるため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本キャリアーの特性は、腫瘍内透過性と血中滞留性を保持しつつ、核酸を細胞内に効率的に導入することである。そのため、抗腫瘍siRNAをブタノール希釈法によって封入したSAPS-iRGD-lipoのスフェロイドに対する透過性を優先的に評価する。既に共焦点レーザー顕微鏡観察によるキャリアーの透過性に関する定量的評価方法は確立済みであるため、迅速に検討可能である。SAPS-iRGD-lipoのスフェロイド透過性が十分に確認された後、蛍光標識SAPS-iRGD-lipoを用いて、マウス尾静脈内投与後の血中滞留性を速やかに評価する予定である。また、微小環境制御核酸の薬効に関して、低酸素下で発現増大するlipocalin2ならびにmiRNAの機能解析を併せて進める計画である。
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