研究課題/領域番号 |
18H03541
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
村上 正裕 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (50174280)
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研究分担者 |
渡辺 知恵 城西大学, 薬学部, 准教授 (30737747)
松本 昭博 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (80824911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヤヌス微粒子 / バイオ医薬品 / ポーラスヤヌス微粒子 / 薬物送達システム / 経口製剤 / 核酸分子 / siRNA / インスリン |
研究実績の概要 |
ビタミンEを化学修飾したsiRNAをリピッドナノスフェア溶液として直腸投与することにより、siRNAの経腸的肝臓デリバリーが可能であることを明らかにしている。 実製剤化への検討の一環として、まず坐剤化の可能性を検討した。siRNA-リピッドナノスフェアを多孔性マイクロスフェアに含浸させ、坐剤基剤に均質分散して坐剤を調製した。これをラットに投与した結果、共焦点顕微鏡イメージから、対照とする溶液投与と同等のsiRANの肝への移行が観察された。さらに、表面1か所に薬物を局在化させた坐剤では、肝臓への送達量が増大することが明らかとなった。このことは、薬物および吸収促進剤を局所高濃度とすることでデリバリー効率が改善できることを示唆している。また、多孔性微粒子が、核酸医薬の経腸デリバリーに有用であることが示された。 得られた結果に基づき、多孔性微粒子の粘膜吸収面に向けた半球からの局所高濃度放出を目的に、多孔質半球とバッキング半球から構成されるヤヌス微粒子を新たにデザインした。種々検討した結果、バッキング半球には油脂-エチルセルロースを用い、多孔質半球にはヒプロメロースフタル酸エステルを用いたところ、設計通り、粒子径約10-20μmの半球のみが多孔質である<ポーラスヤヌス微粒子>が得られることを見出した。 次に、この多孔質半球に自己乳化型処方SMEDDS及び粘膜付着性高分子のカルボキシビニルポリマーと共にインスリンを含浸させたポーラスヤヌス微粒子を調製し、ラットの空腸内への投与実験を行った。対照製剤とした多孔性マイクロスフェアは、インスリン溶液と比較して、有意な血糖降下作用が認められなかったが、ポーラスヤヌス微粒子では、有意な血糖降下作用が観察された。 以上、高分子経腸デリバリーに有効かつ製造が容易なポーラスヤヌス微粒子を発明し、また、実製剤化に向けた有益な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標は、ヤヌス微粒子のダウンサイジングを行い、また、実用経口製剤化に結び付けるため、ヤヌス微粒子を保護して損失を防止するための保護製剤の開発検討を行うことであった。しかし、前者については、前年度に前倒して検討を行い達成したことから、今年度は、開発したナノ化ヤヌス製剤を用いて、薬物の腸管腔内における損失を防止するための製剤の開発と実用経口製剤化のための検討を行うこととした。まず多孔性エチルセルロースマイクロスフェアを用い、吸収促進剤としてリピッドナノスフェアとsiRNAをナノコンポジット化したものを含浸させた。この製剤を、賦形剤に配合して、実製剤の形に製剤しても、肝臓へのデリバリー効果は変わらず、投与部位で微粒子を局在化する工夫を施すことで、肝臓への送達率をさらに改善できることを明らかにした。すなわち、この結果は、保護製剤に吸収部位局所における高濃度の薬物放出性と薬物の拡散希釈を防止する機能を賦与することによって、更なるデリバリー能の向上が期待できることを示唆している。当初は、多孔性微粒子にナノ化ヤヌスを包含させる予定であったが、得られた結果に基づき、経腸DDSに求められる製剤特性を、局所高含量化と速放性と規定し、これを目指したヤヌス粒子を設計・試作・評価することとした。その結果、半球のみが多孔性である<ポーラスヤヌス微粒子>を発明・創剤することができた。ポーラスヤヌス微粒子は、有効成分等を含む溶液を含浸させるだけで容易に多孔性半球のみに薬物を高含量化でき、同時に速放性も確保できる製剤である。インスリンをモデル高分子薬物とする動物実験では、ポーラスヤヌス微粒子により、多孔性エチルセルロースマイクロスフェアを上回る血糖値降下作用が得られた。ポーラスヤヌス微粒子は更なる高機能化・改良の余地も大きく、次年度における実用製剤化に向けた検討を加速させる成果が得られたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
核酸を含有するヤヌス微粒子を内包する製剤を組み入れた経口製剤を試作し、小動物を用いたin vivoにおける経腸送達効率及び薬効を調べることで評価を行う。さらに、改良検討を行うことで、目標とする新規の経口核酸送達システムの基礎開発を達成する。 具体的には、前年度までに試作した蛍光標識化した核酸を含有する経口製剤をマウスやラットなどの小動物に投与し、各臓器の切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡法により核酸分子の経腸送達効率および標的臓器特異性などを評価する。また、投与後の標的臓器における標的遺伝子の発現抑制効果等を、分子生物学的手法を用いて検討し、当該送達システムの可否を評価する。さらに改良・試作・評価を繰り返すことによって、目標の達成を目指す。
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