研究課題/領域番号 |
18H03542
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
植松 美幸 国立医薬品食品衛生研究所, 医療機器部, 主任研究官 (10424813)
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研究分担者 |
森本 展行 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00313263)
田中 賢 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00322850)
山本 雅哉 東北大学, 工学研究科, 教授 (10332735)
森田 成昭 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (20388739)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 水和状態 / インシリコ / スクリーニング / 血液適合性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,分子動力学的シミュレーション(Molecular Dynamics: MD)による材料の血液適合性に関するin silicoスクリーニングを実現するため,材料中の水分子の挙動に関する理解を促す新たな解析モデルを開発することである. 中間水含有モデル化合物としてPoly(2-methoxy-ethyl acrylate) (PMEA)を対象に,温度条件を変化させることによりガラス転移点(Tg)に基づいた材料の立体構造の妥当性評価と動径分布関数を用いた水の分類法について検討した.MD計算は材料用シミュレーションソフトウェア(Material Science Suite, Schrodinger Inc.,)を用いて行った. まず.PMEAのTgはDSCによる実測値とシミュレーションの計算結果との間に良好な相関性が認められたことから,シミュレーションに付与したPMEAの立体構造は妥当であり,本モデルが温度変化に対して実測に近い挙動を示していることが示唆された. また,水分子の時間的挙動から水分子の特徴が次のようにみられた.1)エステル結合カルボニル酸素原子(C=O)から2A以内の距離に存在する水分子の水素原子は,カルボニル酸素原子に補足され,水素結合の形成を維持していた.この水分子は,時間や温度条件に依存することなく観察された.2)メトキシ基の酸素原子(OCH3)から5A以上離れて存在する水分子の水素原子は,220K以下では他の水分子と水素結合を形成したが,270K以上では水素結合が解離した.このメトキシ基酸素原子の近傍に存在し,カルボニル酸素原子に補足された水素原子に水素結合した水分子や,さらに水素結合ネットワークを介して捕捉される水分子は,材料との相互作用が温度条件によって変化した.これより,1は不凍水,2は中間水に分類されると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新シミュレータの導入にあたり,ワークステーションの設定に時間を要したが,材料近傍で水和する水分子の分類について新たな知見を得たため,平成30年度の予定を3ヶ月延長したが,その後は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
中間水含有および不含の様々な高分子材料についても同様に解析し,仮説の検証を行う.中間水の存在が確認されている材料に対するDSC分析では,降温,昇温過程で発熱ピークに差があることが観測されている.本提案シミュレーションでこれらの差異を比較検討することで,高分子材料の水和構造を解明していきたい.
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