研究課題/領域番号 |
18H03543
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
梶本 和昭 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10416216)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脂肪組織 / 血管内皮細胞 / アポトーシス / 自己免疫寛容 / DDS |
研究実績の概要 |
今年度は、高脂肪食誘導性肥満モデルマウスに抗CD115抗体 (clone AFS98) および抗CD25抗 体 (clone PC61) をを投与してM2マクロファージおよびTregを枯渇させ、その上でKLA-ナノDDSを投与し、ナノDDS単独の場合と比較して治療効果が減衰するか否かを調べる、また、ex vivo でUV照射等によりアポトーシスを誘導した脂肪血管内皮細胞を肥満モデルマウスに投与することでKLA-ナノDDSを投与した場合と同等の治療効果が発現するか否かを調べる計画であったが、計画時点から実験環境が変わったため、実験計画の前提となった予備データの再現性が得られるか否かの確認に主眼を置いて検討した。また、実験コストを考慮し、アポトーシス誘導剤としてKLAペプチドの代わりにシトクロムc(CytC)を用いた。 はじめに、平均体重27gの健常マウスに高脂肪食を与えながら、6 mg/kg のCytC-ナノDDSを3日に1回の頻度で5回投与し、その間の体重変化を追跡した。その結果、対照群の体重は15日間で15%増加したのに対し、CytC-ナノDDS投与群の体重増加率は7.8%と有意に抑制され、CytC-ナノDDSがKLA-ナノDDSと同等の抗肥満効果を示すことが確認できた。そこで次に、CytC-ナノDDSを同様の頻度で10回投与したマウスから精巣上体脂肪組織および鼠径部脂肪組織を摘出し、成熟脂肪細胞を除く単核細胞画分を分離して、マクロファージサブセットの解析を行った。その結果、CytC-ナノDDS投与群の精巣上体脂肪組織および鼠径部脂肪組織では、対照群と比較してM2マクロファージの割合が有意に増加することが判明し、予備データの再現性が確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画時点から実験環境が変わったこともあり、実験計画の前提となった予備データの再現性を確認することを第一の目標として検討を行ったが、その確認が得られるまでに時間がかかってしまったため。
|
今後の研究の推進方策 |
実験計画立案の中核となった予備データの再現性が確認できたことから、当初の計画に沿って、初年度の遅れを取り戻すべく検討を進める。 具体的には、初年度に行う予定であった、脂肪血管のアポトーシスが誘導する生体反応におけるM2マクロファージおよびTregの役割の解明と、ex vivoの脂肪血管アポトーシス細胞による自己免疫寛容の誘導の実験に加えて、脂肪血管のアポトーシスを起点として脂肪組織炎症等の治療効果が発現する過程に「脂肪血管に対する免疫寛容」が関与するか否かを明らかにするための検討を行う。そのために、マクロファージに対するeat-meシグナルとして働くリン脂質の一種ホスファチジルセリンを脂質膜に含有したリポソームを作製し、これを投与することでM2マクロファージを誘導した場合の効果をCytC-ナノDDS投与の場合と比較することで、M2マクロファージの誘導に加えて脂肪血管に含まれる何らかの成分に対する抗原提示が必要であるか否かを確認する。
|