研究課題/領域番号 |
18H03543
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
梶本 和昭 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10416216)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪組織 / 血管内皮細胞 / アポトーシス / 自己免疫疾患 / DDS |
研究実績の概要 |
細胞がアポトーシスを起こすと、通常は細胞膜の内側に局在するホスファチジルセリン (PS) が外側に露出し、これがeat-meシグナルとしてマクロファージ等による貪食を促進する。PSを含有した脂質膜で構成される中空リポソーム (薬効成分等を内包していない) も同様の機構で貪食され、抗炎症性サイトカインを産生するM2マクロファージを誘導することができる。しかし、中空リポソームの貪食では抗原提示が起こらないため、抗原特異的な免疫寛容は誘導されない。そこで、今年度は肥満モデルマウスにPS含有中空リポソームあるいはCytC-ナノDDSを投与して治療効果を比較することでM2マクロファージの誘導に加えて抗原提示の必要性を明らかにするとともに、ex vivoでUV照射等によりアポトーシスを誘導した脂肪血管内皮細胞を肥満モデルマウスに投与することでCytC-ナノDDSを投与した場合と同等の治療効果が発現するか否かを調べることで、脂肪血管のアポトーシスを起点として脂肪組織炎症等の治療効果が発現する過程に「脂肪血管に対する免疫寛容」が関与するか否かを明らかにする予定であった。しかし、計画した通りの検討を行う際には同等の性質を有するリポソーム(PSリポソームおよびCytC-ナノDDS)を検討の度に用事調製する必要があり、実験結果の再現性に大きな支障があることが判明した。そこで、長期保存可能なリポソームの大量調製法を確立することに主眼をおいて検討を行った。リポソームの構成脂質を溶解する有機溶剤や補助溶剤、リポソーム内外の水相成分について種々の組み合わせで検討を行うとともに、リポソームの調製段階で凍結乾燥の行程を取り入れることで、使用時に復水するだけでほぼ同じ物性を有するリポソームを極めて簡便に再現良く調製する手法を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画時点から実験環境が変わったこともあり、検討に必要なリポソームの調製段階で再現性が大きく低下するという問題に直面した。これに対応して、リポソームの調整法を改めて見直し、再現性が高く長期保存可能なリポソームの調整方法を新たに確立する必要があったため、計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
計画の進捗に遅れはあるものの、研究の遂行に必要な基盤技術は確立できた。これをもとに、遅れを取り戻すべく、焦点を絞って研究を進める。 具体的には、脂肪血管の抽出物を内包したPS含有リポソームおよび中空リポソームを肥満モデルマウスに投与し、CytC-ナノDDSや脂肪血管のアポトーシス細胞を投与した場合と同等の治療効果が発現するか否かを調べる。さらに、ペプチドアレイもしくはプロテインアレイ等を用い、CytC-ナノDDSを投与して肥満治療を行ったマウスの血清中に含まれる自己抗体の網羅的プロファイリングを行うことにより、脂肪組織炎症の鎮静化やインスリン抵抗性の改善につながった免疫寛容の標的分子 (自己抗原) を探索する。
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