研究課題/領域番号 |
18H03543
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
梶本 和昭 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10416216)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪組織 / 血管内皮細胞 / アポトーシス / 自己免疫疾患 / DDS |
研究実績の概要 |
今年度の検討では、昨年度に引き続き予備データの再現性を検証することに主眼を置いた検討を行った。具体的には、アポトーシス誘導剤としてシトクロムc(CytC)を封入した脂肪血管標的型ナノDDS(CytC-ナノDDS)を肥満モデルマウスに投与し、その1~3日後に精巣上体脂肪組織中に含まれるM0、M1、およびM2マクロファージの存在割合をCD11cおよびCD206の発現を指標としてフローサイトメトリーにより解析した。その結果、CytCナノDDS投与の1日後にはM2マクロファージの割合が未処置群と比較して約4%増加、投与2日後および3日後では約9%していた。また、M0マクロファージの割合はCytCナノDDS投与の1日後では未処置群と同程度でほとんど変化がなかったのに対し、投与2日後および3日後では未処置群のおよそ50%にまで減少していた。これらの結果から、CytCナノDDSの投与により脂肪血管内皮細胞のアポトーシスが誘導され、その結果として脂肪組織中に存在するM0からM2マクロファージへの活性化が亢進したと考えられる。精巣上体脂肪組織だけでなく鼠径部脂肪組織でも同様のマクロファージの変化が認められたことから、CytCナノDDSの投与の影響は全身の脂肪組織に及ぶと推測される。一方、CytCナノDDSの投与1~3日後においてマウスの体重や脂肪組織重量にはほとんど変化は認められなかったことから、脂肪組織中のマクロファージに対して誘導される変化は、肥満に対する治療効果よりも早い段階で引き起こされることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画時点から実験環境が変わったこともあり、実験計画の前提となった予備データの再現性を確認することを第一の目標として検討を行ったが、その確認が得ら れるまでに時間がかかってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画立案の中核となった予備データの再現性が確認できた。今後はCytC-ナノDDSによって誘導される自己免疫寛容のターゲット分子を同定し、それを標的とした新規治療法の検証へ進める。
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