研究課題/領域番号 |
18H03544
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阪本 真弥 東北大学, 大学病院, 講師 (90157686)
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研究分担者 |
小玉 哲也 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40271986)
宮澤 正顯 近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
伊藤 康一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (70400299)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リンパ節転移 / 精密診断 / 化学療法 / 超音波 / 早期診断 |
研究実績の概要 |
リンパ節転移は、多くのがんにおいて遠隔転移に先行し発症する。したがって、リンパ節(LN)転移の早期診断により、適切な治療が早期に行うことができれば、がん患者の予後の大幅な改善が期待できる。しかし、転移LNにおいて、その体積が増加する前の臨床的N0状態で転移を高い精度で診断できる画像診断法は確立されていない。本研究では、ヒトと同等の大きさのLNを有するリンパ節転移モデルマウスであるMXH10/Mo/lprマウスを用い、超微小転移リンパ節の精密診断法およびリンパ行性薬剤送達法を用いた低侵襲な新規がん化学治療法の開発を目的とする。 MXH10/Mo/lprマウスを14週齢まで系統維持・繁殖させ、小型動物用高周波超音波イメージング装置(最高周波数80MHz)で可視化しながら、マトリゲルと混合した腫瘍細胞をマウス腸骨下LN(SiLN)に接種した。同リンパ節の輸出リンパ管を介して下流の固有腋窩LN(PALN)に転移を誘導し、X線CT造影剤をSiLNとともにPALNの上流のLNである副腋窩LN(AALN)に注射してPALNに造影剤を送達させ、エックス線マイクロコンピュータ(マイクロCT)を用いてリンパ洞の画像解析を行った。 LN転移マウスモデルの臨床的N0状態のPALNに輸入リンパ管を介して造影剤を流入させると、まず辺縁洞に造影剤が貯留し、さらにLNの皮質および髄質のリンパ洞に流入した。また、AALNへの造影剤の貯留は、注入速度が速いほど増加した。さらに、LNに体積変化をきたしていない臨床的N0状態のPALNの辺縁洞で増殖した乳がん細胞は、AALNからの造影剤の流れを妨げ、造影剤の局所欠損領域をCT画像上で示した。 以上より、マイクロCTによるリンパ管造影法は臨床的N0状態のリンパ節転移を診断するための新しい方法として有用と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線CT造影剤を上流LNから下流のLNに送達させるリンパ洞造影法を用い、LN転移マウスモデルの臨床的N0状態の転移LNのX線マイクロコンピュータ(マイクロCT)像を解析した。 その結果、マイクロCTによるリンパ洞影法は臨床的N0状態の転移性LNを診断するための新しい方法として有用であることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞を接種した上流LN、転移した下流のリンパ節のパラフィンおよび凍結切片を作製し、病理組織学的に血管内皮細胞、リンパ洞内皮細胞を同定し、血管密度およびリンパ洞密度を求め、2D/3D超音波画像、2D/3D CT画像、および病理形態像の相関性を検証し、臨床応用可能な画像診断法の開発を試みる。 一方、リンパ行性薬剤送達法(LDDS)を用いたがん化学療法に関しては、LDDSに求められる抗がん剤の溶媒の粘度、浸透圧、pH値、および薬剤濃度を最適化するために、LDDSを想定したリンパ行性投与薬剤にICGを添加し、生体発光画像解析装置(IVIS)を用いて、微小転移期のニッチ環境リンパ節への薬剤の送達量と導入効率を実験的に求める。リンパ行性投与薬剤を上流LNに注射し、下流LNに送達させる。注入薬剤の下流LNへの集積量はIVISを用いて解析し、上流LNへの注入量、注入速度、上流LNの大きさ、リンパ管の直径、リンパ節内の圧力と下流LNへの薬剤の集積量との関連性を解析する。以上の実験値および理論値の解析結果からLDDSに最適なリンパ行性投与薬剤の溶媒を確定する。
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