研究課題
リンパ節(LN)転移の有無は、患者の生命予後に大きく関与するため、転移初期LNを的確に診断して早期治療を行うことは重要である。しかし、腫大する前の転移リンパ節を高精度に診断できる画像診断法は確立されておらず、従来の全身化学療法ではリンパ節内で増殖する腫瘍細胞への薬剤送達性には限界がある。本研究では、ヒトと同等の大きさのLNを有するMXH10/Mo/lprマウスを用い、転移初期LNの精密診断法およびリンパ行性薬剤送達法(LDDS)を用いた低侵襲な新規がん化学治療法の開発を目的とする。マウスの腸骨下LN(SiLN)にルシフェラーゼ発現腫瘍細胞を注入すると同側の固有腋窩LN(PALN)に転移を誘導し、生体発光画像解析装置(IVIS)や高周波像解析装置(VEVO)を用いることにより、LN転移の形成をタイムゼロからリアルタイムで観察可能ある。このLN転移モデルとIVIS、VEVO および造影マイクロ(μ)CT画像解析法を用いて転移初期LNの検出法について検討した結果、リンパネットワークの上流LNに造影剤を注入し、リンパ行性に下流LNのリンパ洞を描出するリンパ洞造影法が転移初期LNの診断に有用であることが明らかとなった。治療に関しては、腫瘍を転移させたPALNの上流にある副腋窩LN(AALN)に5-FUを注入するとPALNに薬剤が送達され、抗腫瘍効果があること、薬剤の至適注入速度は10~80μL/minであることが明らかとなった。2020年度は、薬剤の注入速度を10μL/minとし、体重あたりの薬剤量や薬剤の性状を変化させて転移初期リンパ節への治療効果とその副作用を検討した。その結果、LDSSを用いた5-FUによる転移初期リンパ節治療は、低侵襲であり、治療介入による体重減少や臓器傷害はないこと、薬剤の浸透圧や粘度によって抗腫瘍効果に違いがあることなどが明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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