研究課題/領域番号 |
18H03546
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
大城 幸雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (10535008)
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研究分担者 |
北原 格 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70323277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝切除術 / 術中ナビゲーション / 医工連携 / 3Dカメラ |
研究実績の概要 |
【目的と方法】 これまで肝切除ナビ研究は、赤外線や磁気センサーなど、GPS(現在位置情報の把握)に関して様々な手法が試行されてきたが未だ有効な手法は確立していない。また、ICG蛍光技術を肝切除術に取り入れている施設がみられるが、カーナビのようなナビゲーション技術とは異なる。3Dカメラセンサーを用いたカーナビのような肝切除ナビの開発に挑戦している。原理は、オプティカルセンサーで構成したステレオビジョン方式の3Dカメラを使用し、臓器形状、位置、切離面、切離線の方向と深さをリアルタイムでセンシングし、肝変形可能なシミュレーションソフトLiversimに反映させる。本手術ナビで利用可能な術式は、支配領域に沿って直線的に切離する区域切除以上である。シミュレーションソフトで門脈の分岐を基に支配領域を計算し切離線が自動的に決定する。よって、どのように切離されるかが予め設定(カーナビでいう経路の設定)され、術中の切離具合をシミュレーションソフトに反映させナビゲーションを実現するというコンセプトである。 【結果】 これまでに外側区域切除、後区域切除、左葉切除、右葉切除の、のべ6例に実施した。予定切離線で切離される切離線と割面を3Dカメラで計測し3D再構成を行い、計測点群をポリゴン化しポリゴン面において法線計算することによって切離線を抽出した。抽出した切離線の方向と深さのデータをLiversimに送り肝臓CGモデル上の対応する予定切離線上に反映させ、肝表最外周の境界頂点を切り離し自動で切離させた。課題は、切離が深くなると切離線の抽出が困難なことや、症例によって肝臓の位置合わせが困難なことが判明した。 【まとめ】 門脈支配領域によって切離線が決まり直線的な区域切除以上の術式であれば、切離線を3Dカメラで抽出することが可能であり、抽出した切離線データに基づいて自動肝切離が可能であった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年4月の新年度になってからすでに新型コロナウイルス感染症が世界中で問題になり出し、わが国においても新型コロナ肺炎が猛威を振るいパニックに陥った。そのなか耳鼻科手術において手術医が患者から新型コロナウイルスに感染したと判明した。外科手術における手術を行う医師団の安全が脅かされ、全国の医療機関において手術の中止、新たな手術患者の受け入れが中止された。当院においても、外科手術の延期、中止、新患の受け入れを制限するという決定がなされた。当研究における対象は、開腹肝切除術施行される患者であるため、開腹肝切除術の中止、延期によって、当研究の施行が不可能となった。その後、徐々にコロナ患者が増加するしたがって、危険性、対策などが明らかとなっていき、外科手術が再開され、肝切除術も行われるようになり、当研究も再開できるようになっていったが手術数は激減した。また、医工連携が必要な当研究では、専門の研究者、企業のエンジニアと頻回のミーティングや会議を行い、研究の問題点や改善点を話し合って抽出し、それに対する改良を重ねていくことが重要であるが、コロナ禍においてはミーティングが滞り、行うべき改良が不可能となってしまった。 また、夏頃には、新型コロナウイルス感染者受け入れ病院である当院にて、病棟クラスター感染が発生し、病棟閉鎖をせざるを得なくなり、それに伴い患者の受け入れを一時的に中止するという事態となり、せっかく増加してきた手術数がまた激減してしまった。そのことによって、また肝切除数が減少し当研究の対象となる手術もなくなり当研究は停滞することとなった。 そういう過酷な状況の中でも当研究を何とか遂行していき、オプティカルセンサーで構成したステレオビジョン方式の3Dカメラを使用し、臓器形状、位置、切離面、切離線の方向と深さをリアルタイムでセンシングするコンピュータ計算の速度向上を改善できた。
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今後の研究の推進方策 |
ステレオビジョン方式の3Dカメラを使用し、臓器形状、位置、切離面、切離線の方向と深さをリアルタイムでセンシングし、肝変形可能なシミュレーションソフトLiversimに反映させる。 本手術ナビで利用可能な術式は、支配領域に沿って直線的に切離する区域切除以上である。シミュレーションソフトで門脈の分岐を基に支配領域を計算し切離線が自動的に決定する。よって、どのように切離されるかが予め設定(カーナビでいう経路の設定)され、術中の切離具合をシミュレーションソフトに反映させナビゲーションを実現するというコンセプトである。 これまでに外側区域切除、後区域切除、左葉切除、右葉切除などに実施し、予定切離線で切離される切離線と割面を3Dカメラで計測し3D再構成を行い、計測点群をポリゴン化しポリゴン面において法線計算することによって切離線を抽出することができたが、さらに施行数を増加させ、精度を高めていく予定である。 抽出した切離線の方向と深さのデータをLiversimに送り肝臓CGモデル上の対応する予定切離線上に反映させ、肝表最外周の境界頂点を切り離し自動で切離させることは可能とはなったが、課題は、切離が深くなると切離線の抽出が困難なことや、症例によって肝臓の位置合わせが困難なことが判明した。門脈支配領域によって切離線が決まり直線的な区域切除以上の術式であれば、切離線を3Dカメラで抽出することが可能であり、抽出した切離線データに基づいて自動肝切離が可能であるが、今後は切離線の正確性を検討する予定である。
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