研究課題/領域番号 |
18H03552
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)
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研究分担者 |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 特任教授 (30130040)
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (30453806)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超音波 / 筋ジストロフィー / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
平成31年度研究では、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)をコードしたmRNAのナノ粒子化を行った。ナノ粒子の調製は、マイクロ流体ナノデバイスを利用した方法にて検討した。粒子サイズは90‐110 nm付近を示し、高い内封効率を示した。これを正常マウスおよびデュシャンヌ型筋ジストロフィーモデルマウス(mdx)の局所筋組織へと投与し、その後の遺伝子導入効率をin vivoイメージング装置(IVIS)にて調べたところ、そのルシフェラーゼ発現は、両者のマウスにおいて3-7日目で高い遺伝子発現が認められた。一方で、Cas9 mRNA/sgRNAとナノバブルによるmdx筋組織への超音波併用導入(1MHz, 2w, 50% duty)を行った。本検討では、ジストロフィン遺伝子の変異エクソンをスプライシング時にスキップ(エクソンスキップ)させるsgRNAを用いた。 結果として、PCR法によるエクソンスキップ効率は未だ十分ではないものの、導入2週間後における欠損ジストロフィンタンパク質の発現回復と発現領域が拡大することが明らかとなった。その発現は、複数回投与することで、発現エリアが増加する傾向が認められ、ナノバブルと超音波照射併用導入に伴う顕著な組織ダメージは観察されなかった。さらに蛍光ラベル化ナノ粒子とナノバブルによる超音波併用法により、筋組織へのナノ粒子の集積も確認することが可能であった。 以上の結果は、Cas9 mRNA/sgRNAのナノ粒子化や超音波併用導入条件を工夫することで治療効率の向上につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討により、デュシャンヌ型筋ジストロフィーモデルマウス(mdx)におけるジストロフィン遺伝子の変異エクソンをスプライシング時にスキップ(エクソンスキップ)させるガイドRNAとCas9をRNAの状態でナノバブルと超音波併用導入することで、欠損ジストロフィンタンパク質の発現回復させることに成功した。また、ナノ粒子とナノバブルとのコンビネーションにより、筋組織へと送達させることも示すことができた。以上の結果はCas9 mRNA/sgRNAのナノ粒子化や超音波併用導入条件を工夫することで治療効率の改善につながると予想され、本研究進捗は順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) ゲノム編集ツールデリバリーシステムの確立:ゲノム編集ツール(Cas9 mRNA/sgRNA)・ナノバブルをDMDモデルマウス(mdx)へ投与し、体外から標的筋組織に治療的超音波照射を行う。またゲノム編集ツール含有ナノ粒子とナノバブルとの超音波併用についても検討する。以下の2)、3)の検討にてin vivoゲノム編集ツールのデリバリーシステムを構築し、根治的な疾患治療システムを開発する。 2) in vivoイメージング装置等によるゲノム編集ツール含有ナノ粒子の組織移行性の検証:標的筋組織部位(超音波照射部位)における蛍光標識したゲノム編集ツール含有ナノ粒子の血管外漏出と組織移行を明らかとするために、蛍光in vivoイメージング装置、光音響イメージング装置にて評価する。 3) ゲノム編集ツール含有ナノ粒子のin vivoデリバリーによる治療効果の検証: 導入組織におけるジストロフィンタンパク質発現を免疫組織学的解析、ゲノム編集効率をPCR法にて調べるとともに、筋機能(筋力、持久力)や組織障害性も併せて検討しつつ治療効率を検証する。これにより治療システムの最適化を図る。
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