本研究では手つなぎ歩行を工学的に実現して歩行支援に適用することを目的とする.今年度は手つなぎ歩行の支援に有効な歩行計測,視線計測,バイタル計測の機能についてシステムを実装した. 歩行計測は自立歩行から手つなぎ歩行へ歩行形態を移行する際,また,その逆に移行する際に歩行状態を判断する上で重要な機能である.ロボットは練習環境を巡回し,歩行状態が不安定な歩行者を検知した場合には,手つなぎアームを手すりや杖の代用として利用することを歩行者に示唆する.歩行練習者が手つなぎ歩行から自立歩行に移行する際には,離脱後の歩行状態を継続して評価する.本機能について今年度に特許出願の準備を行った. 視線計測は歩行練習時に周辺の人物との衝突を回避する上で重要な機能である.歩行練習者とロボットが手つなぎ歩行を練習している時,ロボットはアームからの力触覚入力やアームの駆動出力によって練習者の動作に介入できるが,練習者とロボットの移動を周辺の人物に自然に察知させることは難しい.音声による情報提示は練習者へ混乱を与える可能性があるため,周辺の人物にロボットが目配りで移動方向や移動タイミングを示唆して衝突や見合いを回避する.本機能について今年度に特許出願の準備を行った. バイタル計測は歩行練習を行う人物の生理状態を管理する上で重要な機能である.手つなぎ用のアームを介して練習者より心拍数と血中酸素濃度を取得し,練習前後の生理状態を計測して変化の有無を評価する.バイタル計測の信頼性を高めるため,手つなぎの握り部位に触覚センサを配置して計測時の身体接触を練習者にフィードバックする.歩行練習者が循環器系の基礎疾患を持つ場合は,運動情報と生理情報の計測を組み合わせて歩行練習の身体負荷を評価する.本機能について今年度に学会発表を行った.
|