研究課題/領域番号 |
18H03561
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
武島 玲子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (30188180)
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研究分担者 |
飯塚 眞喜人 昭和大学, 医学部, 准教授 (40274980)
冨田 和秀 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (00389793)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 嚥下センサー / のど仏 / 非侵襲的 |
研究実績の概要 |
前回の基盤研究C(課題番号26350663)において我々は、わずかな圧力変化を検出できる1.5mm幅のピエゾ圧力センサーを製作し、これを3.0mm間隔で埋め込んだ柔らかなセンサーシートを開発した。さらにこのセンサーシートを軽く頸部前面に押し当てることにより、嚥下時の「のど仏」の上下運動を「のど仏」が不明瞭な女性でも非侵襲的に検出できることを初めて示した。この研究から以下の3つの問題点が生じた。①センサーシートに埋め込んだセンサー数が少なく「のど仏」の移動距離を計測できなかった。②シートの厚さが約8mmと厚く、実験者の手から被験者の「のど仏」の動きを感じ取ることが困難であった。③首の形や大きさには個人差があり、「のど仏」の移動距離について正常の基準値がない。これらの問題点を解決できれば、臨床現場において言語聴覚士の手の感覚を邪魔せず、嚥下障害をもつ患者の「のど仏」の移動を非侵襲的かつ正確に計測でき、その基準値から「飲み込み能力」の定量的評価ができる。2018年度は上記の3つの問題点のうち①と②を解決するために以下の研究を行った。(1)ピエゾ圧力センサーの形状の検討:横から導線を固定できるように、ケースの形状を工夫した。またノイズを抑えるために用いたステンレスケースをアルミケースに変更しポリウレタン樹脂との接着性が良くなるように工夫した。(2)ピエゾ圧力センサーのポリウレタン樹脂への埋め込み方法の検討:ノイズを軽減するためにセンサーから増幅器までの導線はシールド線を用いる必要がある。入手できた最小径の約1mmの導線を25本、ポリウレタンゲルからはみ出さないようにシートの中央に埋め込み、極限にまでポリウレタン樹脂の厚みを薄くする工夫を行った。その結果、2~3㎜程度にまで薄くできた。我々の研究成果を第9回アジア・オセアニア生理学会連合2019年大会のシンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は以下の2研究を主に行った。(1)ピエゾ圧力センサーの形状の検討:センサーシートの厚みを減らすため、圧力センサーの形状の再検討を行った。前回はピエゾフィルムの切り出し後、ノイズ軽減およびセンサーと導線の接合のためにフィルムをステンレスケース内に入れて、ケースの後方から導線を固定した。そのため、ステンレスケースの厚みが約3.6mmと厚く、柔軟性の高いポリウレタンシートに埋め込む時に、導線を直角に曲げる必要があり、シートが厚くなってしまった。今回は、横から導線を固定できるように、ケースの形状を工夫し、厚みを1.5 mmまで減少できた。また、前回はステンレスケースを用いたためポリウレタンシートからセンサーがはがれやすかった。ステンレス以外の金属や導電性樹脂について、機械的強度・加工の容易さ・ポリウレタンとの接着強度等の点から検討し、アルミが最適であることが分かった。ブラスト加工でアルミ表面に凹凸をつけることにより、ある程度の接着性が出ることが分かった。(2)ピエゾ圧力センサーのポリウレタン樹脂への埋め込み方法の検討:言語聴覚士の手の感覚を邪魔しない程度まで、前回作成したセンサーシートを薄くする必要がある。そしてノイズを軽減するためにセンサーから増幅器までの導線はシールド線を用いる必要がある。センサーは高額であるため、2018年度は導線のみを埋め込んだ。入手できた最小径の約1mmの導線を25本、治具の形状を工夫して3.0mm間隔で固定し、2回に分けポリウレタンゲルを流し込むことによりシートの中央に導線を埋め込むことができた。その結果、言語聴覚士の手の感覚を邪魔しない程度、つまり2~3 mm程度にまで薄くできた。さらに導線の配線を首に対して垂直方向に這わせることにより、のど仏の凹凸に対しては柔軟にフィットできることが分かった。以上、今年度の目標を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に計画書どおりに研究を行う予定である。2019年度は、2018年度に設計したピエゾ圧力センサーを25個作成する。そして、厚さ2~3 mmのポリウレタンゲルに3.0mm間隔で埋め込みセンサーシートを作成する。当初の研究計画書の予算から約64%に減額されているため、計画書に記述した①センサーシートの開発、および②「のど仏」位置等のパラメーターを自動的に算出するソフトウェアの作成をすべて行うことは予算的に不可能である。そのため、センサーシートの開発を最優先とする。ただし、並行して25個の圧力センサーからの出力電気信号をADコンバーターでパーソナルコンピューターに取り込むプログラムは自作する。そして現在所持している解析ソフトウェアを用いて出力電気信号の解析を行い、自動的に算出するためのアルゴリズムの設計を行う。
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