中途視覚障害者の多くは、晴眼時には文書を見たりできていたため、スマート端末上に表示されている文書を直接なぞり読みできる環境(仮想的な触読)ができれば、2次元に配置されたテキスト文書を効率よく視覚障害者でも,高速に文字を斜め読みできるのではないかとの観点に立ち、指なぞりを下部分の画面上の文字を音声で読み上げるシステム「Touch Talker」を開発した。 システムを起動し音声ガイドに従って、必要なテキスト文書ファイルを開いた後、スマート端末の画面上に表示されているテキストの一部を指でタップすることにより、予め形態素解析により、名詞や動詞、助詞などに切り分けされた文節(文字のかたまり)を一単位として、指先に一番近い文字が音声で読み上げられる機能をiOSとWindows10のタブレット上に実装した。 指なぞり機能の効果を検証するため、はじめに「Touch Talker」に辞書のデータを読み込ませ、デジタル録音機器にも同じスピードで読み上げられた同様の音声データを記録した。中途失明者を想定して、目隠しをした晴眼者5名の被験者に「Touch Talker」を使用した場合と、デジタル録音機器を使用した場合で、どちらがより速く欲しい情報を探し出せるか比較検証した。今回使用した問題は”四字熟語”と”地理用語”の2種類で、設問ごとに3問ずつの小問を用意した。3問全て解くまでにかかったトータルの時間を計測し、それぞれの使用感や疲労感のアンケートを行った。その結果、個人差はあるものの、5名ともデジタル録音機器を使ったときより、なぞり読み機能を使った方が時間が短くなっており、本機能の有効性を確認した。
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