従来のRGBカラー画像に基づく色覚シミュレーションでは,原理上どうしても欠落する情報が存在するが,その欠落はスペクトル情報に基づく技術開発で防ぐことができる.スペクトル情報に基づく色覚研究のメリットは,色弱者等の色彩感覚を正確に見積もることができる点である. 2020年度計画はコロナウイルス感染拡大に伴う措置対応のために,ハイパースペクトルカメラの実験室利用が困難となり,また高齢者を対象とする視覚実験も感染防止配慮のために実施できなくなってしまい,研究計画の変更を余儀なくされた.繰り越しによって,2022年度まで研究期間を延長したが,実験環境そのものに関しては改善されることがなく,さらに電子機器の入手も困難な状況が続き,予定通りに研究計画を進められず,不本意なまま本研究を収束させなければいけない状況となった. 当初,2020年度計画ではハイパースペクトルカメラ(2次元スペクトル情報)から高齢者と色弱者の色覚特性を再現する研究を計画していた.特に,薄暮下における高齢者の手すりの見えを題材に,対象物の視認性をハイパースペクトルカメラで再現することを試みていたが,高齢色覚に関する実験データを取得することができない状況であったため,論考に基づくモデル構築のみを実施して研究を終了させることとした. 研究成果については,モデル構築に関する論文を投稿中であるが,スペクトル情報利用に関する原著論文1報と,色弱者等の色覚に関する調査研究報告1報が発刊されたので報告する.
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