研究課題/領域番号 |
18H03566
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長田 年弘 筑波大学, 芸術系, 教授 (10294472)
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研究分担者 |
田中 咲子 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00641101)
小堀 馨子 帝京科学大学, 総合教育センター, 准教授 (00755811)
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
中村 るい 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (50535276)
仏山 輝美 筑波大学, 芸術系, 教授 (70315274)
大原 央聡 筑波大学, 芸術系, 教授 (80361327)
齊藤 貴弘 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80735291)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パルテノン / ギリシア美術 / ギリシア神話 / ギリシア宗教 / ギリシア彫刻 |
研究実績の概要 |
2019年度は、右記の五つの事業を実施した。①6月15日に、早稲田大学において、アテナイ、アクロポリス奉納物の美術と碑文について、また古代ギリシア浮彫の技法について研究例会。②9月1日から13日まで、エジプト共和国およびギリシャ共和国において現地調査。研究代表、分担者、協力者15名参加。カイロ、ルクソール、ギザ、サッカラ、メンフィス、アレクサンドリア(以上エジプト)、アテネ、ブラウロン、アンフィアライオン、ラムヌス(以上ギリシャ)にて遺跡と博物館調査。③9月9日に、アテネ、碑文博物館において「碑文セミナー」実施。④10月19日に、筑波大学文教校舎において古代ギリシア・ローマ世界における身振り図像に関する研究例会。分担者田中咲子、小堀馨子、協力者坂田道生による研究発表と討議。⑤12月8日に、筑波大学芸術系において、「パルテノン・フリーズを制作者の視点から検討する」研究例会。分担者大原央聡、中村義孝による研究発表、協力者小川燿平によるポスター発表。なお、①3月1日に予定していたニコラ・ラマール博士(キール大学PD)の招聘と講演は、新型コロナウイルス感染拡大のために中止とした。②2020年3月26日、27日に、筑波大学文教校舎において、歴史班を中心としてVasileia Manidaki博士(ACROPOLIS RESTORATION SERVICE, Athens)およびAdele Scafuro教授(Brown University, USA)を招聘し、古代ギリシア碑文と奉納物に関する研究会およびワークショップを実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のために中止とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歴史班および美術史班の研究として、①および③において、特に古代ギリシア奉納記念碑の美術と碑文について研究成果を得た。師尾晶子、仏山輝美の発表題目は、「前5世紀アテナイ碑文の刻文年代再考:年代の問題と美術史・政治史・宗教史の叙述への影響」および「実見調査ノート:パルテノン・フリーズ浮彫にみる絵画的な性質について」。②においては、エジプトの各遺跡とアテネ、アクロポリス遺跡を調査し、古代オリエントと古代ギリシア美術、史学の影響関係に関して知見を得た。④においては、古代ギリシアローマ美術における嘆願と哀悼の仕草について討議した。(なお予定していたJ.B. Connelly教授(ニューヨーク大学)の招聘と講演10/19は、10/11関東地方を襲った暴風雨のために欠航により中止とした。)⑤においては、古代ギリシア彫刻と制作技法について、古代ギリシア美術のローマ美術への影響について討議し知見をえた。大原央聡、中村義孝、小川燿平の発表題目はそれぞれ「エジプト、イタリア南部 実見調査(2019年8月-9月)の報告(エジプト彫刻、モティアの若者、リアーチェの戦士)」、「パルテノン神殿フリーズ騎馬隊の西面北側2騎の原形について」、「ローマ模刻におけるIdeal Sculptureについて」(ポスター発表)。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の事業として、右記を計画している。①パルテノン彫刻に関する全体集会として、第1回研究例会を開催し、パルテノン神殿造営目的と、附属彫刻の美術史的な解釈について研究発表と討議を行う。時期は新型コロナウィルス感染拡大のため未定。②アクロポリス美術館等において、パルテノン彫刻および関連作品に関する調査を行う。必要に応じて、アテネ国立碑文博物館において、研究例会と碑文セミナーを実施する。時期は新型コロナウィルス感染拡大のため未定。③海外招聘者の講演を含む、歴史班と美術史班の合同の研究例会の実施。奉納碑文に関する研究成果の発表と討議は、令和元年度に延期とした研究会とセミナーを実施する予定。④さらに、制作班の活動として、制作者の観点によるパルテノン彫刻研究例会を実施する。特に、昨年度に中村義孝研究協力者によって制作した石膏模刻フリーズ浮彫について、検討を進める。これら①から④の活動によって、パルテノン神殿装飾に影響したと思われるアクロポリス奉納記念物群に注目し、パルテノン彫刻との比較検討を行う。神殿彫刻と奉納記念物群の共通性を踏まえ、建築装飾が必ずしも民主政の表象をメッセージとしていたのではなく、むしろ、神々への神殿の奉納という、オリエント宗教にも共通する古代文明に一般的な宗教観を表出していたことを検討する。美術史学と歴史学の共同調査により、欧米の価値観から離れた視点から解釈基盤を問い、日本隊独自の成果として発表する。 美術史班(長田、田中、中村るい)は、パルテノン彫刻の図像と様式の分析を、歴史班(小堀、師尾、齋藤)は、アクロポリス奉納記念物の碑文等の文字資料の分析を中心に行う。制作班(大原、仏山)は、パルテノン彫刻の制作過程と造形について分析と指導助言を行う。研究例会を情報交換と集約の場とする。研究例会は公開とし、共同研究の社会還元の一部とする。
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