研究課題/領域番号 |
18H03569
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
久間 泰賢 三重大学, 人文学部, 准教授 (60324498)
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研究分担者 |
加納 和雄 駒澤大学, 仏教学部, 准教授 (00509523)
宮崎 泉 京都大学, 文学研究科, 教授 (40314166)
小倉 智史 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (40768438)
苫米地 等流 一般財団法人人文情報学研究所, 仏典写本研究部門, 主席研究員 (60601680)
望月 海慧 身延山大学, 仏教学部, 教授 (70319094)
倉西 憲一 大正大学, 仏教学部, 専任講師 (90573709)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インド仏教 / 僧院 / グプタ朝 / 密教思想 / イスラーム |
研究実績の概要 |
【総括班】久間(代表者)は本研究を統括し、国際学会(11/18、ウィーン)で進捗状況を報告した。【写本文献資料研究班】宮崎(責任者)は国際workshopなどを開催し、個人的にアティシャの顕教文献の検討も進めた。加納はNayatrayapradipaとNayatrayabhedaの梵本を校訂・読解し、9世紀前後の顕密の理解を深めた。倉西はインド仏教最後期のAbhayakaraguptaとその弟子たちの著作、特にRatnaraksita著PadminiとVibhuticandra著Uddyotaの研究を進めた。望月はアティシャに帰せられる13の密教儀礼関連文献のうち前半の7論を調査し、彼がチベットに伝えた密教儀軌の一部を解明した。【碑文資料研究班】古井龍介(責任者・研究協力者)は国際workshopを開催し、南・東南アジア各地の碑文に基づき中世仏教僧院と社会との関係を検討した。また、マドラサにviharaの語を充てる12世紀ベンガルの石碑を校訂・検討した。【美術・建築・考古学研究班】島田明(責任者・海外協力者)らは1月にインドの遺跡調査を実施し、西デカンなどの僧院遺構・彫刻の精査と写真撮影を行った。【データベース作成班】苫米地(責任者)はデータベースのプラットフォームとしてのITLRの活用を検討した。また、研究会を主催し、データ入力に関わる諸問題の検討とデータの実地入力を行った。【外部評価班】小倉(責任者)は2019年度の繰越事業として、中央アジア・東南アジアにおける仏教教団と他宗教との関係を主題とした国際workshop、ペルシア語訳の存在する仏典の講読会、ドイツ語圏の研究者との共催による僧院を主題とした連続講演会、他班との協同による国内研究会を2020年度に開催した。馬場紀寿(研究協力者)は5世紀スリランカの大寺(Mahavihara)が編纂したパーリ文献の研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、インド仏教における僧院の実態と諸機能について、異なる研究分野と方法論に基づいた複数の研究班の連携を通じて総合的に考察するものである。特に、密教思想の台頭に伴う仏教の衰退が論じられてきたグプタ朝以降に焦点を絞り、インドの主要地域の僧院を対象として調査を進めることを目的としている。国際workshop(碑文資料研究班:5/27-28、東京大学東洋文化研究所、写本文献資料研究班:9/10-14、ナポリ東洋大学プロチダ校舎)では、本研究の趣旨を周知し、国内外の研究者と意見交換した。併せて、他科研などと共催の研究会・講演会を開催した。また、ニューズレター第2・3号を刊行し、高校生向けのサイトで本研究を紹介する作業を進めた。データベースに関しては、研究会を通じてデータを蓄積した。外部評価班の以下の事業は、コロナ禍のため2020年度に繰り越された。中央アジアにおける仏教教団と他宗教との関係を主題とする国際workshop(2020/7/26、オンライン開催)では、イスラームの視点を含む学際的議論が実現した。東南アジアに関する同一主題の国際workshop(2021/3/7、オンライン開催)では、東南アジアの仏教とヒンドゥー教の関係について知見を得た。同日開催された、ペルシア語訳の存在する仏典の講読会は、インド学・仏教学とイスラーム学の研究者が一堂に会して議論した点で新奇性を有する。ドイツ語圏の研究者との共催による連続講演会(2021/3/17&24、オンライン開催)は、多様な視点から僧院に光を当てたもので、日独の研究者が交流する機会も提供した。他班との協同による国内研究会(2020/12/19、オンライン開催)では、南インドの仏教衰退とネパールの僧院に関する発表を通じて、本研究の方向性を再確認した。以上の点を総合的に判断するならば、本研究はおおむね順調に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進するにあたっては、これまで通り「挑戦性・総合性・融合性・国際性」(日本の学術研究への現代的要請)を念頭に置きつつ、特に以下の点に留意したい。 (1) 年度を通じて、各研究班が引き続き成果を蓄積できるような機会(研究会など)を設けるとともに、それらの成果を他の研究班も共有できるような体制をさらに強化する。すでにメーリングリストやDropboxの活用を通じて研究データの共有を推進しているところであるが、今後も個別的成果が総合的議論につながるように配慮する。 (2) 研究代表者をはじめとして、研究メンバーが国際的・学際的性格を持つ学会などに積極的に参加することで、外部の識者からもできる限り多くのフィードバックを得るように努める。 (3) ニューズレターは今後も引き続き刊行していく予定であるが、研究者に対する発信にとどまらず、広く社会全体に本研究の目的と意義を周知できるように努める。高校生向けのサイトにおいて本研究を紹介する試みは、その一環として位置づけられるものである。 (4) 僧院データベースの入力・公開をより一層促進することで、研究成果の国際的発信に努める。それと同時に、研究メンバーが当該データベースを起点として、学際的・総合的議論を展開できるように心がける。その際、碑文資料や美術関連のデータも積極的に活用する。併せて、関連する他のデータベースとの効果的なリンクの方法についても検討を進める。
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