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2019 年度 実績報告書

1970年代以後の人文学ならびに芸術における語りの形式についての領域横断的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H03570
研究機関京都大学

研究代表者

岡田 暁生  京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70243136)

研究分担者 藤原 辰史  京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
小関 隆  京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10240748)
三輪 眞弘  情報科学芸術大学院大学, メディア表現研究科, 教授 (20336647)
橋本 伸也  関西学院大学, 文学部, 教授 (30212137)
田辺 明生  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
佐藤 淳二  京都大学, 地球環境学堂, 教授 (30282544)
藤井 俊之  京都大学, 人文科学研究所, 助教 (30636791)
森本 淳生  京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90283671)
上田 和彦  関西学院大学, 法学部, 教授 (90313163)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードアート / 人文工学 / 文理融合 / メディアアート / 1970年代
研究実績の概要

本年度は人文科学研究所において、合計14回の研究会を開催した。とりわけ大きな成果としては、「文理融合」の新しいかたちの模索として、「文芸理」の融合という論点が出てきたことである。文と理の融合が喧伝されて久しいが、いうまでもなく具体的な方向はほとんど現れておらず、従来「文系」の領域とされてきたもの(芸術も含む)をデータサイエンス等の手法を用いるといった、ある種トートロジー的な作業を超える融合にはほど遠いといっていい。しかも従来の文理融合の多くは、このように「理の手法を文の領域へ応用する」という一方向性を脱していなかった。しかるに本研究で浮上しつつある方向とは、文と理の接合点として「芸術」を介在させる手法である。近現代においては芸術は一般に「文」に属する営みと思われがちであるが、古くはダ・ヴィンチのような例を持ち出すまでもなく、今日わたしたちが「芸術」と呼んでいる営みは、科学的思考と不即不離の関係にあり、科学的思考の感性化(すなわち表現)であり、また科学的問題についての芸術というメディアを通した思考実験という性格をもっていた。これらに鑑み、昨年度はメディアアートおよびバイオアートの実践者に定期的に研究会への参加を要請し、「声の人工合成」や「遺伝子操作」などの先端領域においては、芸術と科学の境目がほとんどなくなっていることを確認できた。このように理系的な問題を一方でアート/アーティストを介して感性的に理解し、その文系的な、つまりは人間学的な「意味」を問う一方で、もう一つの課題として浮上しつつあるのが、文系的認識、すなわち「意味」の世界についての認識をアートを介して発信する必要性である。基礎科学の認識が応用され社会に発信されるのが工学だとすると、これはアートを介した「人文工学」の営為だともいえ、次年度以後の本研究の最重要課題となるであろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は「われわれが生きている世界はいつ始まったのか」を問う歴史的研究と、「この世界を超える世界のありよう」についての思考実験的な作業を両輪とする。2018年度はとりわけ1970年代に焦点を当てた前者が研究の中心となったのに対して、2019年度は後者についての作業を積極的に進めた。予定していたダブリンのUCLA大学人文科学研究所との国際合同シンポジウムでは、この二つの柱を中心テーマとする予定であったが、これはコロナ禍により2021年度に延期されることになった。しかしながらすでに、分担者の一人である作曲家/メディアアーティストである三輪眞弘および彼が所属するIAMASのスタッフとともに、文芸理融合をテーマとする具体的な作品が制作発表されつつあり、本年度の計画は十分遂行できたと考える。

今後の研究の推進方策

2020年度は人文科学研究所において合計12回の研究会を予定している。一方の柱は1970年から2020年にかけての半世紀の歴史的意味を政治システム・経済思想・芸術潮流・思想史の視点から総括することである。その際のキーワードの一つは「戦後」である。この半世紀は冷戦時代が次第に終了へ向かい、そして冷戦後が来たという意味で、一種の戦後であった。と同時にこの数十年の社会的緊張は一種の戦前を予感させもしていた。こうしたことを論点としつつ、2022年度に予定されている「戦後」をテーマとしたUCLA大学人文科学研究所との国際合同シンポジウムに備えることが、本研究の目的の一つである。もう一つの柱である「文芸理融合」については、分担者の一人である三輪眞弘によって9月に岐阜サラマンカホールを使用し、空のホールをネットで視聴者とつなぎ、リアルタイムで双方向的なパフォーマンスを行うことで「集う」ことの意味について考える実験的催しを計画している。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (8件) (うちオープンアクセス 6件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] 反人種差別と霊的普遍主;日印ナショナリズムの交差と分岐2020

    • 著者名/発表者名
      田辺明生
    • 雑誌名

      人文学報

      巻: 114 ページ: 159-170

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] “Genealogies of the “Paika Rebellion”: Heterogeneities and Linkages”2020

    • 著者名/発表者名
      Akio Tanabe
    • 雑誌名

      International Journal of Asian Studies

      巻: 17 ページ: 1-18

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Marguerite Duras, une voix fantôme : roman, théâtre, cinéma, textes réunis par Atsuo Morimoto et Gilles Philippe2020

    • 著者名/発表者名
      Atsuo Morimoto
    • 雑誌名

      Zinbun

      巻: 50 ページ: 71-176

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ブランショとヴェイユー非人格=非人称性からのポリティック2020

    • 著者名/発表者名
      上田和彦
    • 雑誌名

      外国語外国文化研究

      巻: XVIII ページ: 110-122

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 告白とパレーシア 隷従化されない主体化を求めてー2019

    • 著者名/発表者名
      上田和彦
    • 雑誌名

      思想

      巻: 1145 ページ: 125-144

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] アイルランド革命から「大戦後」を考える2019

    • 著者名/発表者名
      小関隆
    • 雑誌名

      九州歴史科学

      巻: 47 ページ: 119-126

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 二〇世紀の農業技術と戦争技術2019

    • 著者名/発表者名
      藤原辰史
    • 雑誌名

      歴史評論

      巻: 832 ページ: 25-35

  • [雑誌論文] トラクターの社会史(特集 農業機械の普及と文化)」2019

    • 著者名/発表者名
      藤原辰史
    • 雑誌名

      農業食料工学会誌

      巻: 81 ページ: 4-8

  • [学会発表] “Democracy and Development in Tension: Predicament of Politico-economic Stalemate among the Dongria Khonds in Odisha, India,”2020

    • 著者名/発表者名
      Akio Tanabe
    • 学会等名
      International Conference on 'Globalizing Life World and Transformation of Political Sphere’ Institute for Development and Communication (IDC)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 「IAMAS校歌」(2019)を再演2020

    • 著者名/発表者名
      三輪眞弘
    • 学会等名
      ソフトピアジャパン、 IAMAS 2020展タイムベースドメディア・ガムランコンサート
  • [学会発表] フォルマント兄弟の新作「自律的音声生成装置」発表会&いまいけぷろじぇくとのための「ボイパと朗読」世界初演2020

    • 著者名/発表者名
      三輪眞弘
    • 学会等名
      豊中市立文化芸術センター、「身体のTRANCE 人体音楽祭~身体なき声なき身体~」をプロデュース
    • 招待講演
  • [学会発表] 「虹機械 公案-001」(2015)を再演2020

    • 著者名/発表者名
      三輪眞弘
    • 学会等名
      東京オペラシティーリサイタルホール、日本の作曲家2020「大井 浩明 ピアノリサイタル」
    • 招待講演
  • [学会発表] 女声傍観者達と5人の男声歌手のための「火の鎌鼬」(2014)再演2020

    • 著者名/発表者名
      三輪眞弘
    • 学会等名
      横浜みなとみらいホール、Just Composed 2020 「合唱の未来形」
    • 招待講演
  • [学会発表] 「箏と風鈴のための、もんじゅはかたる」を世界初演2019

    • 著者名/発表者名
      三輪眞弘
    • 学会等名
      ぎふ未来音楽展2019 ガラ・コンサート&シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 'The End of 'Post-wars' Europe: Introductory Remarks on Brexit2019

    • 著者名/発表者名
      Takashi Koseki
    • 学会等名
      European Crisis in Historical Perspectives
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 田辺明生・竹沢泰子・成田龍一編 『環太平洋地域の移動と人種;統治から管理へ、遭遇から連帯へ』2020

    • 著者名/発表者名
      田辺明生
    • 総ページ数
      422
    • 出版者
      京都大学出版局
    • ISBN
      9784814002481
  • [図書] 『マルグリット・デュラス 〈声〉の幻前──小説・映画・戯曲』(ジル・フィリップと共編)、2020

    • 著者名/発表者名
      森本淳生
    • 総ページ数
      228
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      978-4-8010-00474-0
  • [図書] 音楽と出会う2019

    • 著者名/発表者名
      岡田暁生
    • 総ページ数
      254
    • 出版者
      世界思想社
    • ISBN
      4790717305
  • [図書] 歴史書の愉悦2019

    • 著者名/発表者名
      藤原辰史編著
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      ナカニシヤ
    • ISBN
      4779513979
  • [図書] 分解の哲学2019

    • 著者名/発表者名
      藤原辰史
    • 総ページ数
      341
    • 出版者
      青土社
    • ISBN
      978-4-7917-7172-1
  • [図書] 農学と戦争 知られざる満洲報国農場2019

    • 著者名/発表者名
      足達太郎・小塩海平・藤原辰史共著
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      978-4-00-001826-5

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公開日: 2021-01-27  

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