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2019 年度 実績報告書

世界遺産「コパンのマヤ遺跡」における王朝創始時期とそのプロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H03586
研究機関金沢大学

研究代表者

中村 誠一  金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 教授 (10261249)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードマヤ文明 / コパンのマヤ遺跡 / 7号神殿 / 11号神殿 / 王朝創始期 / 宇宙線ミューオン / 三次元計測
研究実績の概要

2019年度には、3つの調査を実施した。以下、順にその概要と成果を記述する。

(1)7号神殿の発掘調査:7号神殿は1894年のピーボディ博物館のコパン遺跡の探検の際に最初に発掘されたと思われるが、その詳しい記録は残されていない。その後、1930年代から40年代のアメリカ・カーネギー研究所の大規模なコパン調査の対象となり、その一部区域が発掘調査され後古典期の墓も確認されている。2019年の調査では、まず、このカーネギー研究所の調査跡の精査を行った結果、彼らが古典期後期の部屋を再利用したと考えていた後古典期の石室墓が、実は古典期後期の石室墓を再利用したものであったことを明らかにした。また、カーネギーの担当考古学者は、石室内の人骨を取り上げず副葬品の土器だけを取り上げたこと、そのため石室内に副葬されていたヒスイの胸飾りを見落としていたことが分かった。これらは、我々の調査で回収された。さらに、2019年の調査においては、7号神殿の建造物内部に深いピットが掘られ建造物の重なり具合が解明されると同時に、その過程で回収された炭化物が放射性炭素年代測定にかけられ、古典期前期から後期の年代が得られ、それぞれの建造物との対照が行われている。
(2)11号神殿の調査:共同研究機関である名古屋大学チームの宇宙線ミューオンを使った内部透視調査は、続行されている。建造物の外周全体の三次元計測も行われ、建造物上部では1930年代にカーネギー研究所の考古学者が発見した王墓前室とも考えられる大きな部屋状空間の調査を40年ぶりにおこなった。
(3)アクロポリス西側トンネル網内部の王朝創始期建造物群の調査:可搬型LiDARを使って、I-6, I-28トンネルの精細なデジタル三次元計測を行い、そこに露出されている王朝創始期の建造物群(フナル、ジェナル、マルガリータ)の建築層位と石室墓の位置関係、その年代を分析している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この研究課題の目的は、欧米の研究者たちが作ったコパンのマヤ遺跡における王朝創始時期とそのプロセスに関する定説を独自資料で検証し、修正することにある。そのために、古代都市中心部に位置する7号神殿、11号神殿が選ばれ、大規模かつ集中的な発掘調査が行われると同時に、最新の測量機器を使った建造物全体の三次元計測と3Dモデルの作成、宇宙線ミューオンを使った内部透視調査も行われ、着々とその成果が現れつつある。

さらに、欧米の研究者たちが作った定説の根拠となっているアクロポリス西側の王朝創始期の埋蔵建造物群も、LiDAR機器により精密計測され三次元モデルが作成されている。こういった成果に加えて、自身の調査でこれまでに見つかった副葬土器の検討や放射性炭素年代測定値の蓄積などにより、着実に研究は進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

COVID-19の感染拡大が一気に広がり、現地でも遺跡公園自体が封鎖され、しばらくの間、現地での発掘調査が実施不可能となった。
この機会を活用し、これまでに集積した炭化物の放射性炭素年代測定を進めると同時に、数多くの知見が得られた2019年度の調査報告書の執筆と英・西二ヵ国語による出版を推進する。このようにして、欧米の研究者との議論が常にできる状況を維持するとともに、いったん感染拡大の問題が収束した暁には、直ちに現地調査を再開できるよう準備を進めておきたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ホンジュラス国立人類学歴史学研究所(ホンジュラス)

    • 国名
      ホンジュラス
    • 外国機関名
      ホンジュラス国立人類学歴史学研究所
  • [雑誌論文] Copan Archaeological Project (PROARCO): Archaeological Investigation in the Group 9L-22 and 9L-23, Copan, Honduras, Vol.2 [コパン考古学プロジェクト(PROARCO):9L-22, 9L-23 グループにおける考古学調査(2)]2020

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura
    • 雑誌名

      Kanazawa Cultural Resource Studies

      巻: 23 ページ: 1-64

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of 3D Technology to the Tunnel Network Excavated in the Acropolis of Copan (コパン遺跡アクロポリスにおける発掘トンネル網への三次元計測技術の適用)2020

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura
    • 雑誌名

      Kanazawa Cultural Resource Studies

      巻: 23 ページ: 65-128

    • オープンアクセス
  • [学会発表] An application of cosmic-ray muon imaging technology in Maya Archaeology2019

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura
    • 学会等名
      ICCMaSS (International Congress of Material and Sustainability)2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Un raveling the Copan Dynasty: a new perspective on Copan’s Early Classic Period as seen through the latest research (コパン王朝史を解き明かす:最新調査成果から見た古典期前期のコパン)2019

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura (中村誠一)
    • 学会等名
      第3回国際マヤシンポジウム in 岡山大学
  • [学会発表] Investigaciones recientes en Honduras: primeros resultados sobre la excavacion del Templo 7 de Copan (ホンジュラスにおける最新の調査:コパン遺跡神殿7の発掘に関する初期成果)2019

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura and Masahiro Ogawa
    • 学会等名
      VIII CONGRESO CENTROAMERICANO DE ARQUEOLOGIA en El Salvador
  • [学会発表] Nuevas investigaciones arqueologicas y conservacion en la Acropolis de Copan, Honduras (ホンジュラス、コパンのアクロポリスにおける新たな考古学調査と保存事業)2019

    • 著者名/発表者名
      Seiichi Nakamura, Melvin Fuentes and Eliud Guerra
    • 学会等名
      XXXVIII SIMPOSIO DE INVESTIGACIONES ARQUEOLOGICAS EN GUATEMALA.
  • [備考] コパン考古学プロジェクト:7号神殿発掘調査成果の概報

    • URL

      http://crs.w3.kanazawa-u.ac.jp/

  • [備考] マヤ文明総合プロジェクト活動報告

    • URL

      @kanazawamayaproject

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公開日: 2021-01-27  

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