研究課題/領域番号 |
18H03596
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (20280521)
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研究分担者 |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
池谷 信之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80596106)
芝 康次郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10550072)
山田 昌久 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70210482)
佐野 勝宏 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (60587781)
長崎 潤一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70198307)
岩瀬 彬 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (70589829)
藤田 祐樹 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (50804126)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホモ・サピエンス / 東アジア / 旧石器時代 / 縄文時代 / 海洋進出 |
研究実績の概要 |
①海域別調査(津軽・伊豆・対馬・琉球):津軽海峡については、青森の縄文早期遺跡出土黒曜石の原産地分析に着手した結果、従来土器の交流から予測されていたよりもはるかに活発な交流があったことが示唆された。伊豆諸島海域については、神津島などへの渡航を何度か成功させているシーカヤッカーから聞き取り調査を実施した。対馬海峡については、日本側の後期旧石器時代初頭の石器文化の容態と、対馬で縄文早期末に腰岳産黒曜石が搬入されていることを確認した。琉球列島海域については、徳之島(天城)・沖縄島(サキタリ洞)・宮古島(ツヅピスキアブ)の先史時代遺跡について発掘調査または遺物整理を実施し、遺跡形成過程や海産物資源利用について新知見を得た。さらに沖縄県内の遺跡出土品について自然科学分析(顔料分析、材質分析)に着手した。②日本周辺域の調査:日本列島への渡来ルートを検討する一助として、フィリピンの更新世~完新世石器群の調査を実施した。これらは後期旧石器時代初頭の剥片石器群を理解するための比較資料となる。③漂流シミュレーション:琉球列島への移住が偶然か意図的かを区別するための分析を継続した。④人骨研究:縄文時代人の上腕骨について大規模形態解析を実施し、海岸部集団の腕が太く舟漕ぎと関連している可能性をはじめて示した。⑤古代舟研究:先史時代の舟利用解明へ向けて、石斧による丸木舟製作実験とその海上テスト、縄文丸木舟の構造調査、近現代の丸木舟漁に関する聞き取り調査(秋田)、丸木舟の民俗資料調査(秋田・青森)を実施した。⑥石斧の研究:先史時代の舟製作に利用された可能性を追究するための各種調査として、関東南部の凝灰岩製石斧の石材原産地追跡調査、各地出土の石斧の観察と3D形状データ採取、実験使用痕分析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であった昨年度の最初の目標は、個々の研究を当初計画通りに走らせつつ、出てくる課題を洗い、グループ全体で共有し意見し合って方向修正を加え、全体を軌道に乗せることであった。そのために、キックオフとまとめのための2回の全体会議を行なったが、結果として、残り期間内に挑戦すべき優先課題が明確になった。具体的には、海峡横断の証拠として黒耀石と土器についてのさらなるデータ収集が有効であること、石斧の詳細な研究が高インパクトの成果に結びつきそうであることが、見えてきた。まだ具体的成果を得るには至っていないが、よい指針が得られ、残りの計画期間で興味深い成果を上げられる見通しが立てられたという点において、計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の事項を中心に進める。①津軽・伊豆・対馬・琉球の4つの海域における海洋進出史を示す基礎データとして特に黒耀石のデータと土器の整備、②東アジアの海を越えた先史集団の移住を検討するための比較分析データとして台湾の旧石器文化についての調査、③島への移住がどの程度の集団サイズであれば成功するかについてのシミュレーションとそれを加味した漂流シミュレーション、④先史時代における黒潮海域の往来についての人骨形態からの吟味、⑤先史時代に利用されたことがわかっている丸木舟の調査と性能テスト、⑥丸木舟製作に必要な道具技術(石斧)の検討。個別研究の効果的推進のためのグループ打合せを随時行うほか参加者全員の意思疎通をはかるための全体会議を実施する。
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