研究課題/領域番号 |
18H03602
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本川 雅治 京都大学, 総合博物館, 教授 (30293939)
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研究分担者 |
西川 完途 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (10335292)
遠藤 秀紀 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30249908)
押田 龍夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50374765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動物地理 / 琉球列島 / 動物区系 / インドシナ半島 / 日本列島 / アジア / 山地 / 島嶼 |
研究実績の概要 |
陸上脊椎動物のアジアにおける地理分布を明らかにし,広く提唱されている旧北区と東洋区の区系動物地理区の妥当性およびその境界を再検討するため,分布の形成と変遷について分布のコネクティビティという概念を用いて解明を進めた.新型コロナウイルスの感染拡大により,国内・国外での調査実施が困難であったことから,翌年度に繰越,翌々年度に事故繰越して研究を実施した.旧北区と東洋区の境界とされる地域として日本,中国,ベトナムを中心に,既存の文献情報をもとに検討するとともに,独自のフィールドワークと標本に基づくデータ解析を実施した.歴史的な要因と現在の地形や気候などの影響を評価し,動物区系地理学を再検討した.哺乳類,爬虫類,両生類が含まれる陸上脊椎動物のアジアにおける種多様性に関するフィールド調査をもとにした分布データ・変異データの解析,文献データの整理を行った.種内での形態や遺伝子に見られる地理的変異や系統地理分化パターンの解析を進めた.新型コロナウイルスの影響で琉球列島での調査実施が困難であったため,国内では日本列島と大陸との間でなお動物地理学的課題の見られる,長崎県対馬と山口県見島での調査を実施した.国外ではインドシナ半島で動物区系分布が複雑であるベトナム北部の山地での調査を実施するとともに,これまでに蓄積した標本からのデータ収集を新型コロナウイルスによる渡航制限が緩和された後に実施した.形態にみられる地域変異の形成要因について,環境応答や形態可塑性,生殖との関わりに着目した解析を幾何学的形態測定法,三次元形態の比較,生殖器形態の組織学的解析をもとに進めた.また,人為分散の影響についても考察した.成果の一部は学会等で発表し,参加者との議論を深めた.海外での研究は相手国の研究機関に所属する研究者との共同研究として実施し,研究業績を共著論文として国際学術雑誌に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により,国外での野外調査や標本調査が困難となったために研究計画の実施時期を変更し,当初予定年度から翌年度への繰越,翌々年度への事故繰越により研究を実施した.また,国内では調査地域を変更して研究を実施した.そのため,資料収集・資料調査が遅れたため,当初予定よりも研究課題の進捗がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限の解除に合わせて実施した調査については,解析を早めることによって,遅延を最小限とした研究成果の公表につなげていく.また,フィールドワークの不足は,これまでに蓄積してきた標本や資料の解析を行い研究成果につなげる.翌年度の繰越,翌々年度への事故繰越があるため,翌年度の事業と平行して実施することになったが,それぞれの課題が効果的に実施できるように,調査等の実施計画を慎重に策定し,実施することを目指す.区系動物地理区の検討では,研究の進展と共に,高標高における分布や標高分布の理解,また島嶼での分布形成の理解が重要であることがわかってきたので,その検討をさらに進める.また,人為的な分布拡大が動物地理区の理解を難しくしている可能性が高いことがわかってきたことから,低標高や島嶼に分布する種についても検討を行っていくように研究内容の改善を行った.
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