研究課題
中部~下部更新統の古琵琶湖層群堅田層を対象として、昨年度採取した長さ84.6mの定方位ボーリングコア(KT1コア)と一部層準が重なるように、長さ約60mおよび約40mのオールコア(KT2コア、KT3コア)を採取した。採取コアは、高知大学海洋コア総合研究センターにて半割と層相記載、写真撮影、コア連続CT撮影、帯磁率およびγ線強度の測定を実施し、KT2コアでは2層のテフラを、KT3コアでは3層のテフラを、それぞれ確認した。KT2コアのテフラは大阪層群今熊Ⅰおよび今熊Ⅱテフラに、KT3コアのテフラは下位より喜撰テフラ、B火山灰、バイオタイトⅠテフラに対比される。これらのテフラと大阪湾1700mコアや上総層群のテフラの火山ガラスの主成分・微量成分分析を行い、下位より喜撰テフラが大阪層群アズキテフラに、B火山灰が大阪層群狭山テフラに、今熊Ⅰテフラが八甲田国本テフラに、それぞれ対比され、バイオタイトⅠおよび今熊Ⅱテフラが大阪湾1700mコアに挟在することが明らかになった。これらのテフラ対比により、大阪湾1700mコア、古琵琶湖層群堅田層コア(KT1~KT3)および上総層群国本層(TB1コア)がテフラ層序により直接対比可能となった。さらに今熊ⅡテフラのジルコンU-Pb年代測定を実施し、約71万年前の年代値を得た。KT1コアでは松山・ブリュンヌ(MB)境界前後の詳細な古地磁気分析を進め、MBトランジションが深度30.77~36.29m間であること,この間に9回の極性反転が生じていることが明らかにされた.この層準は,花粉分析で明らかにされた温暖期の直後であり、MIS19に相当する。花粉分析はKT3コアでは数m間隔で進め、喜撰テフラ降灰前後にアカガシ亜属のピークで示される温暖期が認められ、それがMIS21のピークに相当することが示された。
3: やや遅れている
今年度までに採取したKT1~KT3コアをテフラ、MB境界、特徴的な砂層などの鍵層で対比し、喜撰テフラ下位から今熊Ⅱテフラ上位にいたるまでの連続層序を確立する計画であった。しかし、KT1コアの帯磁率およびγ線強度分析が遅れ、肉眼で識別できないテフラ降灰層準の識別・対比が進まなかった。また古地磁気分析ではKT2コアのMB境界が決定できていない。こうしたことから、KT1~KT3コアの連続層序が確定できておらず、花粉分析を詳細に実施するコアの選定と試料採取が滞った状況である。KT1コアを対象とした珪藻分析では、コア最深部付近からしか定量分析に足りる珪藻化石が検出されず、これより上位層準の珪藻分析による堆積環境の把握が困難であることがわかった。
KT1コアの帯磁率データを参考にコア堆積物の火山ガラス分析を進め、バイオタイトIテフラやB火山灰の降灰層準の有無と検出を行う。KT2コアでは約1m間隔で古地磁気分析を行い、MB境界(あるいはMBトランジション)の層準を明らかにする。これらの結果から、KT1~KT3コアの連続層序を確立できるように努める。花粉分析と珪藻分析はMIS21~MIS20層準をカバーするKT3コアを中心に行い、酸素同位体層序と両者の分析結果から推定される気候変動および水文環境変動との対応関係を検討する。KT2コアのMB境界前後の層準では花粉分析を数層準で行い、KT1コアとの比較(花粉の産出頻度や変動の類似性など)を行い、詳細な分析対象とするコアを選別するための資料を得る。昨年度からの課題として対応できなかった貝化石のウラン濃度は、サルボウ貝を対象に現在の貝殻、弥生時代の貝化石、最終間氷期(MIS5e)の貝化石を対象として分析と検討を行う。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 9389
doi.org/10.1038/s41598-019-45466-8