研究課題/領域番号 |
18H03609
|
研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
加藤 茂弘 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員(移行) (50301809)
|
研究分担者 |
兵頭 政幸 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 名誉教授 (60183919)
北場 育子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (60631710)
廣瀬 孝太郎 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60596427)
石村 大輔 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (00736225)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 気候変動 / 古地磁気 / 松山・ブリュンヌ境界 / テフラ / ESR年代測定 / 中期更新世 / 近畿三角帯 / 古琵琶湖層群堅田層 |
研究実績の概要 |
古琵琶湖層群堅田層から採取した3本のコア(KT1コア,KT2コア,KT3コア)について火山ガラス分析を行い,KT1コアの深度約64mにバイオタイトI(Bi-I)テフラ降灰層準を認定した.またKT2コアの深度35~60m間の古地磁気分析を進めて,深度約55mに松山・ブリュンヌ(MB)境界の上限を確認した.これらの結果から,MB境界上限を用いてKT1コアとKT2コアの対比を,Bi-Iテフラ層準を用いてKT2コアとKT3コアの対比をそれぞれ行い,最終的に3本のコアを対比することから約87~70万年前の連続堆積物を得ることができた.一方,KT1コアにおけるMB境界上限とBi-Iテフラとの層位関係から,この間の堆積物にMB境界下半部やプリ・カーサーと呼ばれるイベント層準が存在する可能性が示唆され、さらなる古地磁気分析の必要性が明らかになった.比較基準となるMB境界の古地磁気変動の詳細は,中国黄土高原のレス堆積物等を用いて明らかにし,その意義を検討した. 古琵琶湖層群のテフラとの対比が想定された淡路島の大阪層群のテフラについてジルコン結晶を用いたFT・U-Pbダブル年代測定を行ったが,約2.3Maという前期更新世を示す古い年代値が得られた. Bi-I,B火山灰(=狭山テフラ),喜撰テフラ(=アズキテフラ)の3層のテフラを挟在するKT3コアで花粉分析を行い,喜撰テフラ直上の層準にアカガシ亜属花粉が産出する温暖期を見出して,酸素同位体比層序のMIS21ピーク層準に対比した. 貝化石のESR年代の妥当性を検証するため,丹後半島中部に分布し,MIS5eの海成層と推定される黒部貝層の貝化石を対象にESR年代測定を行い,約79~132kaの年代値を得た.高ウラン(U)濃度が検出された貝化石で年代が若く,放射非平衡補正や堆積後のU獲得過程を含めた年代計算の必要性が明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染拡大抑制のため研究協力機関の利用制限があり,古地磁気分析が予定通りに実施できなかった.このため,古地磁気分析の結果に基づいて分析層準を決定する予定であった花粉分析についても,KT3コアを除いて分析を進めることができなかった. 貝化石のESR年代測定は同様な理由で繰越実施としたため,測定結果が得られたのは2021年度末となり,貝化石内部の放射非平衡補正やウラン濃度の獲得過程を考慮した年代計算方法の検討を進めることができなかった.また,比較検討用の試料となる能登半島,平床貝層の貝化石や地層の採取も,県外移動の制限があってできていない. テフラの火山ガラスの主成分・微量成分分析についても,同様に研究協力機関との関係で全ての対象試料の分析が完了できておらず,大阪湾1700mコアや上総層群のテフラとの完全な対比は完了していない.
|
今後の研究の推進方策 |
研究協力機関の利用制限に対応しつつ,できる限り必要な層準のコア堆積物の古地磁気分析を行い,松山・ブリュンヌ境界における古地磁気変動の詳細を明らかにしていく.また,それが判明次第,古地磁気変動が古気候に及ぼした影響を明らかにするため,委託実施も考慮して,必要な層準の花粉分析を進める. テフラ中の火山ガラスの化学分析については,研究協力機関との情報交換を進め,早急かつ効率的な分析ができる体制を構築する. 貝化石のESR年代の検討は,平床貝層などの追加の試料分析は期間内で実施できないため,測定済試料についてウラン濃度の質量分析計による再測定を行った上で,年代計算方法の検討を行って適正年代を算出するように進める.
|