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2019 年度 実績報告書

高齢者の財産管理制度の分析と構築

研究課題

研究課題/領域番号 18H03611
研究機関東北大学

研究代表者

水野 紀子  東北大学, 法学研究科, 教授 (40114665)

研究分担者 嵩 さやか  東北大学, 法学研究科, 教授 (00302646)
石綿 はる美  東北大学, 法学研究科, 准教授 (10547821)
渡辺 達徳  東北大学, 法学研究科, 教授 (20230972)
大村 敦志  学習院大学, 法務研究科, 教授 (30152250)
得津 晶  東北大学, 法学研究科, 准教授 (30376389)
早川 眞一郎  専修大学, 法務研究科, 教授 (40114615)
小粥 太郎  一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40247200)
森田 果  東北大学, 法学研究科, 教授 (40292817)
藤岡 祐治  東北大学, 法学研究科, 准教授 (40632237)
中原 太郎  東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (60401014)
久保野 恵美子  東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
澁谷 雅弘  中央大学, 法学部, 教授 (80216035)
今津 綾子  東北大学, 法学研究科, 准教授 (80708206)
鳥山 泰志  東北大学, 法学研究科, 教授 (10432056)
吉永 一行  東北大学, 法学研究科, 教授 (70367944)
池田 悠太  東北大学, 法学研究科, 准教授 (10779458)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード相続法 / 家族法 / 高齢者法 / 民法 / 社会保障法
研究実績の概要

2019年度は、2018年度に引き続き、高齢者の財産管理に関する問題を、死亡時の財産処理、生前の財産保全・運用、消費者被害の分野ごとに社会問題班が具体的な社会問題について、A.手続班、B.後見班、C.消費者班ごとに検討し、カテゴリ班Ⅰが公的介入の在り方について総論的検討を行った。
具体的には、A.手続については、今津が民事執行法の改正や、近時問題になっている養育費の支払い確保について公的介入の要否・あり方も含めて検討し、中原がフランスにおける遺言による財産承継における公証人の役割について検討した。B.後見班では、国家の後見的介入についてアウトプットの代表例である社会保障について、嵩が子の親に対する扶養義務と社会保障の関係について検討し、インプットの代表例である税制について、渋谷・藤岡が登記名義人の死亡時における固定資産税や、家族財産の管理・承継の変化と税制の関係、現金の保有に対する所得課税の検討を行った。C.消費者班では、得津が生命保険等についての検討を行い、渡辺が居住という重要な問題に関連する借地借家法の検討を行った。
また、A・B両面にわたる問題として、高齢者等の財産管理に家族が関与するという場合の後見等をはじめとする法制度について、研究代表者水野・分担者吉永・中原・石綿によって比較法学会のシンポジウムでの報告が行われた。具体的には、水野が日本法、吉永がドイツ法、中原が中国法、石綿がフランス法についての検討を行った。さらに、得津は方法論的検討として、高齢者の財産管理を論じるにあたって民法学の方法論と他法等との比較を行った。
また、総論的検討を行うカテゴリ班Ⅰでは、代表者水野が、A.手続、B.後見,C.消費者全てにわたる高齢者の財産管理を保護する制度的インフラの不存在、相続における清算手続を欠く問題点を指摘し、専門家の関与を指摘するとともに、国家的保護の類型の候補を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は、2018年度に引き続き高齢者財産管理に関する諸問題を、死亡時の財産処理、生前の財産保全・運用、消費者被害の分野ごとに、具体的な社会問題について、A.手続班、B.後見班、C.消費者班ごとに検討し、カテゴリ班Ⅰが公的介入のあり方について総論的検討を行った。
具体的には、A.手続について、養育費の支払いを中心とする家事事件、遺産分割における公証人の介入、B.後見面では、インプットの観点から固定資産税や財産承継の際の課税、アウトプットの観点から親子の扶養義務と社会保障、A.B両面に関する問題として後見や夫婦財産制の検討、C.消費者取引の側面では、生命保険や借地借家法の検討が進んだ。2018年度の研究と総合すると、かなりの程度、問題の洗い出しと抽出が進み、その網羅性も進んだと考えらている。また、方法論としての実証研究・経済分析の進化も進んでいる。このような現実問題の洗い出しと方法論分析は一定程度進めたが、まだ実践レベルで十分に架橋できておらず、2020年度以降もこの点を意識しながらの研究が必要であろう。
カテゴリ構築については、日本における公証人の不存在、諸外国の制度と比較して後見等に関する裁判所による国家的な介入の不足を指摘することに成功した。手続のみならず、実体法的な面での法的介入の不存在についても問題点を明らかにできた。
これらの研究内容の報告は、2019年度においても、代表者、分担者において、国内外を問わず、積極的になされている。
特に、中間報告的な意味を持つものとして、2019年比較法学会シンポジウムにおいて、「家族による財産管理とその制度的代替」というテーマのもと、代表者、分担者により報告が行われ、学会においても高く評価された。
これらの点から、おおむね順調に進んでいると評価をした。

今後の研究の推進方策

今後は、2018年度・2019年度の成果を経て、高齢者の財産管理の議論の出発点となる「カテゴリ」(法制度)を具体的に構築する作業を行う。代表者水野、分担者大村・小粥を中心に、高齢者財産管理に関する諸制度(相続、成年後見、信託、その他契約・代理など)を貫く保護の在り方を検討する。このような新たなカテゴリの創出は大上段の議論となり、個別具体的な制度との連関が見えにくくなることから、持ち戻しや相続させる旨の遺言といった様々な具体的論点との関係性を分担者久保野が検討する。
他方で、1つのカテゴリを構想するといっても、他の諸制度との連続を考察する必要もある。財産法でいえば、契約法・物権法・不法行為法それぞれ独自の法原則を形成しており、 高齢者財産管理または相続法の「カテゴリ」が示す準則をそれぞれの分野でどう受け取るのかを分担者渡辺・早川・池田・吉永・鳥山・石綿・中原が検討する。また、フランスの公証人慣行の重要性は遺産分割の手続面の重要性を示唆するものであり、分担者今津が検討する。また、社会保障や租税上の扱いといった公的セクターとの関連を分担者嵩・渋谷・藤岡が分析する。
このようなカテゴリや法的概念の意義を模索する法律学に対して挑発的な言動を続ける分担者森田・得津には、本研究の構想するカテゴリに対して、法と経済学ないし社会科学の立場から生産的な批判を加える(仮想)敵の役割を期待する 。

  • 研究成果

    (33件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件) 図書 (7件)

  • [雑誌論文] シンポジウム家族による財産管理とその制度的代替・日本2020

    • 著者名/発表者名
      水野紀子
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 81 ページ: 2-14

  • [雑誌論文] シンポジウム家族による財産管理とその制度的代替・中国2020

    • 著者名/発表者名
      中原太郎
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 81 ページ: 81-98

  • [雑誌論文] フランスにおける遺言による財産承継の局面での公証人の役割2020

    • 著者名/発表者名
      中原太郎
    • 雑誌名

      法学

      巻: 83巻4号 ページ: 561-582

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 登記名義人死亡時における固定資産税2020

    • 著者名/発表者名
      渋谷雅弘
    • 雑誌名

      税務事例研究

      巻: 174 ページ: 51-70

  • [雑誌論文] シンポジウム家族による財産管理とその制度的代替・ドイツ2020

    • 著者名/発表者名
      吉永一行
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 81 ページ: 15-30

  • [雑誌論文] 2019年ドイツ世話法改正2020

    • 著者名/発表者名
      吉永一行
    • 雑誌名

      法学

      巻: 83巻4号 ページ: 611-624

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 個人と分人ー「民法における人間」を考えるためのノート2020

    • 著者名/発表者名
      小粥太郎
    • 雑誌名

      法学

      巻: 83巻4号 ページ: 72-84

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 養育費の支払確保に向けて2020

    • 著者名/発表者名
      今津綾子
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 32 ページ: 81-88

  • [雑誌論文] 子の引渡しをめぐる実体法上の問題2020

    • 著者名/発表者名
      早川眞一郎
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 32 ページ: 72-80

  • [雑誌論文] 家族による財産管理:フランスの後見・夫婦財産制・家族権限付与2020

    • 著者名/発表者名
      石綿はる美
    • 雑誌名

      法学

      巻: 83巻4号 ページ: 494-509

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] カオナシの民法学:公共政策大学院で「民法」を学ぶ意義2020

    • 著者名/発表者名
      得津晶
    • 雑誌名

      東北ローレビュー

      巻: 7 ページ: 138-188

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 清算手続きを欠く日本相続法の困難2019

    • 著者名/発表者名
      水野紀子
    • 雑誌名

      International Law Review(The Institute of Law & Policy Jeju National University

      巻: 11-1 ページ: 187-195

    • 国際共著
  • [雑誌論文] 固定資産税の現状と課題再論2019

    • 著者名/発表者名
      渋谷雅弘
    • 雑誌名

      資産評価情報

      巻: 231 ページ: 3-9

  • [雑誌論文] 現金の流動性と匿名性に対する課税2019

    • 著者名/発表者名
      藤岡祐治
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 29 ページ: 204-207

  • [雑誌論文] 新法解説 民事執行法等の改正について2019

    • 著者名/発表者名
      今津綾子
    • 雑誌名

      法学教室

      巻: 470 ページ: 52-58

  • [雑誌論文] ハーグ条約と国内実施法2019

    • 著者名/発表者名
      早川眞一郎
    • 雑誌名

      別冊法学セミナー

      巻: 251 ページ: 275-280

  • [雑誌論文] シンポジウム家族による財産管理とその制度的代替・フランス2019

    • 著者名/発表者名
      石綿はる美
    • 雑誌名

      比較法研究

      巻: 81 ページ: 31-49

  • [雑誌論文] 子の親に対する扶養義務と社会保障―生活保護を中心に―2019

    • 著者名/発表者名
      嵩さやか
    • 雑誌名

      社会保障研究

      巻: 4巻1号 ページ: 48-61

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] L'assurance dependance du Japon et ses enjeux actuels2019

    • 著者名/発表者名
      Sayaka Dake
    • 雑誌名

      Revue de droit sanitaire et social

      巻: mai-juin 2019 ページ: 432-440

  • [雑誌論文] 保険金受取人変更の意思表示と対抗要件(最高裁平成29年11月7日決定(平29(オ)1185号、同(受)1469号)、福岡高裁宮崎支部平成29年6月7日判決(平(ネ)202号)宮崎地裁平成28年8月29日判決、(平27(ワ)111号、同475号))2019

    • 著者名/発表者名
      得津晶
    • 雑誌名

      保険事例研レポート

      巻: 323 ページ: 6-25

  • [学会発表] 家族による財産管理とその制度的代替・日本2019

    • 著者名/発表者名
      水野紀子
    • 学会等名
      比較法学会第82回総会
  • [学会発表] 家族による財産管理とその制度的代替・中国2019

    • 著者名/発表者名
      中原太郎
    • 学会等名
      比較法学会第82回総会
  • [学会発表] 家族による財産管理とその制度的代替・ドイツ2019

    • 著者名/発表者名
      吉永一行
    • 学会等名
      比較法学会第82回総会
  • [学会発表] 家族による財産管理とその制度的代替・フランス2019

    • 著者名/発表者名
      石綿はる美
    • 学会等名
      比較法学会第82回総会
  • [学会発表] 家族財産の管理・承継の変化と税制2019

    • 著者名/発表者名
      渋谷雅弘
    • 学会等名
      租税法学会第48回総会
  • [学会発表] 実証分析における因果関係の見つけ方2019

    • 著者名/発表者名
      森田果
    • 学会等名
      司法研修所セミナー
  • [図書] 高齢社会における相続法の課題2019

    • 著者名/発表者名
      水野紀子(新・アジア家族法三国会議編)
    • 総ページ数
      168(担当95-116頁)
    • 出版者
      日本加除出版
  • [図書] 辻村みよ子先生古稀記念・憲法の普遍性と歴史性2019

    • 著者名/発表者名
      水野紀子(山元一・但野雅人・蟻川恒正・中林暁生編)
    • 総ページ数
      980(担当153-172頁)
    • 出版者
      日本評論社
  • [図書] 遺言と遺留分・第1巻遺言〔第3版〕2019

    • 著者名/発表者名
      水野紀子(久貴忠彦編集代表)
    • 総ページ数
      520(担当235-265頁)
    • 出版者
      日本評論社
  • [図書] 新基本民法1総則編〔第2版〕2019

    • 著者名/発表者名
      大村敦志
    • 総ページ数
      284
    • 出版者
      有斐閣
  • [図書] 日本とブラジルからみた比較法2019

    • 著者名/発表者名
      早川眞一郎(柏木昇他編著)
    • 総ページ数
      680(担当115-139頁)
    • 出版者
      信山社
  • [図書] 新基本法コンメンタール借地借家法〔第2版〕2019

    • 著者名/発表者名
      渡辺達徳(田山輝明・澤野順彦・野澤正充編)
    • 総ページ数
      384(122-129頁、320頁)
    • 出版者
      日本評論社
  • [図書] 中国合同法研究 中日民事法学之対話2019

    • 著者名/発表者名
      渡辺達徳(小口彦太編著/文元春・楊遠舟(訳))
    • 総ページ数
      452
    • 出版者
      人民法院出版社・北京

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公開日: 2021-01-27  

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