研究課題/領域番号 |
18H03619
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宇山 智彦 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (40281852)
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研究分担者 |
西川 賢 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (10567390)
大串 敦 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (20431348)
加茂 具樹 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (30365499)
吉田 徹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (60431300)
澤江 史子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (70436666)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 比較政治 / 権威主義 / ポピュリズム / 民主主義の危機 / 世界秩序の変動 |
研究実績の概要 |
2018年度の活動の中心は、研究会で基本的な論点や学説史、課題を整理・共有することであった。権威主義とポピュリズムは互いに構造や広がりが異なり、それぞれ多義性や揺らぎを抱え、時代や地域により使われ方の異なる概念である。しかしそれらの問題性を十分に踏まえたうえで、現代世界における政治の特徴を捉える装置としてこれらの概念を彫琢していくべきこと、民主主義とは異質な権威主義と民主主義に内在するポピュリズムというような二分法で満足するのではなく、共通の視角で両者を見る必要があることが確認された。特に重要な共通の視角として、権威主義にせよポピュリズムにせよ、それ自体が固有のイデオロギーを持つわけではなく、ナショナリズムや社会主義、開発主義、道徳主義、宗教意識などと接合し、国家資本主義、新自由主義、秩序維持、反腐敗闘争などと相互作用するものであることが、議論の中で明らかになった。また、行政府の優位のもとにおける代表制の機能不全ないし形式化、人民を代表する強い指導者像の希求といった問題が、権威主義とポピュリズムの台頭の背景としてかなり多くの国に見られることが指摘された。他方、国ごとの違いを表す論点として、政党の役割や政党配置、中位・地方エリートや中間団体の役割、人脈・クライエンテリズムのあり方やオリガーキーとの関係、国際関係などが挙げられ、具体的なケースに関する議論を行った。さらに、ポピュリズムや権威主義は短期的ないしいずれは崩壊する現象であるという従来の見方が実態に合わなくなってきていることに鑑み、これらの体制の持続性、特に国民のニーズや民意の反映の仕方に注目すべきだという認識も共有された。以上のような問題意識に立脚しながら、各メンバーが具体的なテーマに関する成果を雑誌・書籍・学会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に書いた通り、基本的な論点や学説史の整理、課題の発見と共有といった面では、計画した水準かそれ以上の進展を遂げることができた。各メンバーは、異なるタイプの権威主義国家である中央アジア諸国と中国の関係、ロシアのポピュリスト権威主義・選挙権威主義、多元化する中国社会における共産党の統治能力、フランスとアメリカのポピュリズムの特徴といった問題について、活発に成果発表を行った。特に研究代表者が本研究課題に関わる全体的な問題意識・知見をまとめて雑誌『世界』に発表した論考は、新聞やSNSでも反響を呼び、一定のインパクトを持ったと考えられる。ただし国際ワークショップは、外国から招く予定だった研究者を含め関係者の都合が合わなかったため当初構想していた形では実施できず、ロシア・ウクライナ研究に限って小規模なワークショップを開くにとどまった。この点は、2019年度により大規模な国際シンポジウムを開くことによって挽回したい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は国際シンポジウムを開催して、研究ネットワークを飛躍的に広げる。そして他の学会への参加も含め、成果を国際的に発信する。また、研究代表者だけではなく各分担者が年1回は研究会等を企画することにより、研究会活動をさらに活性化させる。
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