研究実績の概要 |
本研究課題は、研究代表者(木村福成)による研究総括のもと、(1)空間的な視点、(2)労働者の視点、(3)産業・企業の視点から、労働市場に対するグローバル化の影響を包括的に検証してきた。研究プロジェクト4年目にあたる令和3年度の主要な研究業績は、以下の通りである。 Obashi and Kimura (2021)は、東アジアにおける産業ロボットの投資とデジタルサービス貿易が、産業機械と人的資源の補完関係を強化して、国際分業体制を促進する点を明らかにした。Kiyota, Maruyama, and Taniguchi(2021)は、中国からの最終財輸入は先進国における製造業の雇用を減らすが、中間財の輸入と中国への輸出は雇用を増やす点を明らかにした。Ito, Hayakawa, and Urata(2021)は、日本の企業・事業所レベルのセンサスデータを活用して、中国からの輸入は、輸入品と競合する財を生産している日本企業の雇用を減らし、企業の退出を引き起こしている点を明らかにした。 Aoyagi, Ito, and Matsuura(2022)は、日本の製造業におけるHS9桁レベルの詳細な貿易データを活用して、貿易による経済厚生は1990年代から顕著に高まった点を示した。Felbermayr and Okubo(2022)は、日本の家計データを分析して、教育レベルの高い男性は貿易自由化に賛成する点を明らかにした。Tanaka and Fukunishi(2022)は、EUの特恵関税制度における原産地規則の緩和が、カンボジアやバングラデシュの縫製品輸出の増加につながった点を明らかにした。最後に、Matsuura and Saito (2022)は、新型コロナウイルス感染症の拡大で悪影響を受けた観光産業における政策課題を検証している。
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