研究課題/領域番号 |
18H03641
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐々木 宏夫 早稲田大学, 商学学術院(会計研究科), 教授 (30196175)
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研究分担者 |
及川 浩希 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90468728)
大川内 隆朗 帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70548370)
里見 龍樹 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (30802459)
下村 研一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90252527)
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
高瀬 浩一 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50289518)
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
中丸 麻由子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70324332)
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
横山 和輝 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (60313459)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済実験 / 公共財 / 投資メンテナンス / 民間金融 / 無尽 |
研究実績の概要 |
本研究は太平洋島嶼国、特にミクロネシア地域を対象としており、ミクロネシア・プロジェクトと総称され、現在、ミクロネシア連邦(Federated States of Micronesia: FSM)を最初の対象国として研究を推進中である。2018年5月に最初の全体会議が開催され、事前調査(2017年ヤップ島、2018年ポンペイ島)の検証と今後の研究方針を決定した。2018年8月から9月にかけて、4人のメンバー(佐々木、高瀬、中丸、山邑)がポンペイ島とチューク島の事前調査を実施した。ポンペイ島ではFSM唯一の大学であるミクロネシア大学(College of Micronesia: COM)を再訪して、経済やビジネスを専門とする多数の研究者とのディスカッションにおいて、今後の現地での研究協力が再確認された。更に、現地の有力者たちとのインタビューから、自生的なマイクロファイナンス(無尽)の存在が示唆された。チューク島では現地の基本インフラ(道路、水道、電気など)の惨状から、インフラ投資のメンテナンス問題が経済実験のテーマとして浮上した。FSMへの中継地であるグアム島において、ミクロネシア地域研究の第一人者であるヘーゼル神父にインタビューし、グアム大学のMicronesia Area Research Center (MARC)を訪問した。帰国後、全体会議での現地調査の報告後、調査手法の開発および今後の調査計画について議論した。2019年3月に、4人のメンバー(佐々木、高瀬、中丸、大和)がポンペイ島とコスラエ島の現地調査を実施した。これで事前調査を含めると、FSM主要全4島の現地調査を完了することになった。ポンペイ島では、グアム大学のMARCを再訪し、今後の研究協力を取り付けることができた。コスラエ島では、文化・民族的背景が他島と非常に異なっていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は一昨年度から申請を開始し、この採用初年度には主要メンバーであった澤田が分担者から協力者となった以外は、基本的に申請時のメンバーにより研究課題は順調に進展している。 佐々木と高瀬は従来からセミナー(通称「金曜セミナー」:第2・4金曜日)を主催し、学内外の有力な研究者を招聘することにより、当初の計画通り、経済学と関連分野の研究フロンティアの共有に努めた。今年度の金曜セミナーは、前半は産業組織論を中心にしながらも、経済実験、ゲーム理論、文化経済学、空間経済学、国際金融論、会計ファイナンス論、経営戦略論など、幅広い専門分野から新進気鋭の研究者を招聘し、当プロジェクト内外における新たな研究フロンティアの共有と拡大に資することになった。特に、ミクロネシア・ワークショップ共催として、基本インフラである水道事業や文化人類学に関するセミナーも開催し、本研究課題の目標である分野横断的な研究推進への可能性を広げた。 このようなセミナー等による最先端研究の知見を参考にし、更に、本年度秋まで3回実施した現地調査を慎重に検討した結果、今年度3月に実施予定であった、現地で最初のパイロット実験を次年度に延期することになった。2018年9月のポンペイ島とチューク島での事前調査の結果、当初の予想に反し、主要4島の属性の違いが、言語、宗教、習慣等の民族的違いより、男系か女系か、中央集権的か分権的か、などの社会構造の違いによることが明らかなとなったためである。研究遂行上、社会構造の本質を見極める必要があり、パイロット実験の前に、最後に残されたコスラエ島の事前調査を実施した。調査の結果、他島と比較し、コスラエ島の文化・民族・経済・政治的特性が大きく異なっていることが分かり、経済実験の実施場所や対象者に関して再検討する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に微調整した計画に従い、研究を着実に進行する。暫定的な研究成果が出次第、メンバー全体で共有し、積極的に外部に発信する。初年度に当ミクロネシア・プロジェクト専用に設置したサーバを用い、ウェブサイトによる外部への情報公開やメンバー間の情報の共有を実現する。FSMを含め発展途上の島嶼国では、インターネットの環境が未整備で通信が不安定であることが多い。更に、そのような地域にある大学では、ネットワークに繋がったパソコンが備え付けられた経済実験室は期待できない。そこで、大川内を中心に、ノートパソコンをサーバとし、多数のタブレット端末により構成されたイントラネットを使った現地調査や経済実験仕組を開発中である。今年度9月の調査において、簡単なイントラネット仕組みの現地テストを既に実施し、成功している。来年度中に、イントラネットによる経済実験仕組みを完成させ、国内(早稲田大か東工大)でのプレ実験を経て、現地において最初の経済実験を実施する。具体的には、2019年秋までにCOMにおける経済実験体制を確立し、グアム大学での経済実験の実現を模索する。そして、冬までにCOMとグアム大に再度訪問し、経済実験を前提とする準備を進め、翌2020年度の3月までに、COMとグアム大での経済実験を実施する。 来年度は経済実験を実施する上で、現地の文化的背景を深く理解する必要があるため、FSMを専門とする文化人類学者を招聘する予定である。更に、現地に滞在経験のないメンバーにも現地調査の機会を与え、現在推進している投資メンテナンスに関する経済実験以外の研究テーマの推進に繋げていく。従来通り、ミクロネシア・ワークショップとして金曜セミナーを開催するのに加え、関係する分野や専門の研究者や更に意識の高い社会人を対象として、ミクロネシア・プロジェクトのキックオフイベントとしてフォーラムを開催する予定である。
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