研究課題/領域番号 |
18H03641
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐々木 宏夫 早稲田大学, 商学学術院(会計研究科), 名誉教授 (30196175)
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研究分担者 |
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
河野 正治 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (20802648)
里見 龍樹 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (30802459)
高瀬 浩一 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50289518)
中丸 麻由子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (70324332)
大川内 隆朗 日本大学, 文理学部, 助教 (70548370)
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
下村 研一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (90252527)
及川 浩希 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90468728)
山邑 紘史 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (00610297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経済実験 / 公共財 / 投資メンテナンス / 民間金融 / 無尽 |
研究実績の概要 |
本研究はミクロネシア地域を対象としており、現在、ミクロネシア連邦(Federated States of Micronesia: FSM)を最初の対象国と想定して研究を推進中である。昨(2019)年度末に発生していた新型コロナ(COVID19)が世界的に流行し、今(2020)年度中の対面での会議実施は不可能となり、原則Zoomによるインターネット会議となった。今年度前半は、昨年度(2022年)2月に実施したグアムでのメンテナンス・ゲーム実験の結果報告と分析と、コロナ禍でも実施可能な現地調査やインターネットによる実験手法の開発を進めることになった。今年度後半では、海外出張なしで調査や実験を可能にするため、FSM在住の日本人をコーディネーターとする現地調査の準備を進めた。インターネット環境が脆弱かつ不安定な中、Zoom会議を随時開催し、英語と現地語による質問票を作成した。さらに、メンテナンス・ゲームのグループ単位をこれまでの1人と2人に加え、4人まで拡大するなど、ゲームアプリの改訂を進めた。そして、今年度末(2021年3月)に、早稲田大学において新型コロナに対する最大限の感染対策(体温測定、消毒、換気、洗浄など)を実施する厳戒態勢の中、対面での経済実験を実施した。通常の経済実験室では狭い教室に多数のデスクトップPCが配置され、密な状況を回避できない。しかし、我々が開発した場所を選ばない実験仕組み、すなわち、多数のタブレットにより形成されるイントラネットワークにより、実験が可能となった。大きな会議室において、3人用テーブルに参加者1人が着席し、各テーブルをできるだけ迎え合わせにならないよう配置し、各テーブル上には白色段ボールで三面を囲い、30人以上がタブレット端末を安全かつ快適に操作できる実験環境を実現し、他の大学に先駆け1日計80人規模の対面での経済実験を成功させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に発生した新型コロナが世界的に流行する中、日本では、ワクチン開発と接種、治療薬の開発などコロナ対応に手間取る一方、多くの感染者が重篤な症状を示し、多数の死傷者が発生した。医療体制がひっ迫し、医療、介護、教育、研究、産業、政府、自治体など、全ての組織や機関において、不急不要な外出を禁止するロックアウト政策により、新型コロナの急激な流行を抑制した。大学においても、これまでの対面授業主体のカリキュラムから、オンライン授業主体への不可避的転換が図られた。授業資料(配布資料など)、授業動画(動画シナリオ、録画・編集などを含む)、インターネット試験(各動画授業後の小テストなどを含む)、インターネットによる授業管理システムへの完全移行など、オンライン授業対応のため、大学教員はロックアウト状態の中、オンライン授業対応に孤軍奮闘することになった。本研究メンバーほぼ全員が大学教員でもあり、エフォートレベル全体に占める教育業務の割合が大部分となり、研究業務の割合が極端に減少した。加えて、公共交通機関の使用が制限され、不要不急の外出が控えられるようになり、各家庭では、新型コロナ対策や家族の世話や介護など、家事労働が急増し、各メンバーの研究環境は著しく悪化した。太平洋の小島嶼国においては、スペイン統治時代に、ヨーロッパから持ち込まれた疫病により、人口の過半以上が失われてしまうほどの壊滅的被害を受けた歴史がある。現在でも、医療体制が非常に脆弱で、感染者を受け入れる病床の確保ですら事実上不可能であり、新型コロナ流行に対して、これらの島嶼国は世界に先駆けて、昨年3月より事実上の無期限鎖国状態となり、海外の研究者がFSMを含めて、太平洋島嶼国に出張することは不可能となり、本研究上不可欠な現地での調査や実験は実施できなくなり、本研究は予定よりやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
来(2021)年度早々から、東工大、グアム大、早稲田大での実験結果の分析および解析を進め、研究成果を論文にまとめ、学会発表や招待講演などで発表する。いただいた意見や提案を生かし論文を改訂し、先行研究の十分なサーベイを行い、学術論文として国際的な専門雑誌に投稿する。また、今年度準備した英語や現地語の質問票をもとに、来年度前半に、現地コーディデーターによる現地住民を対象とした調査を実施し、暫定的な結果が出次第、メンバー全体で共有し、暫定的な結果を積極的に外部に発信する。これまで採用してきたメンテナンス・ゲームのアプリでは、参加者が現在の消費を減らして将来のために投資する、さらには、参加者が現在の消費を減らして、自身が所属するグループに協力して投資する、という意思がある場合でも、ゲームが確率的に初期のラウンドで途中終了し、データ数が極端に少なくなってしまうというケースが頻繁に見られた。来年度に、この現象を解決するようなゲームアプリのアップデートを行う予定である。新型コロナの流行が治まり、国境封鎖が解除された段階で、現地での実験を再開したい。コロナ禍での現地調査や経済実験手法の開発のため、既に、国内でWEBベースの大規模な経済実験調査を実施した大和の手法を基に、大川内を中心に太平洋島嶼国に対してもWEBベースの経済実験や調査の可能性を模索する。メンテナンス・ゲーム以外でも、複数の共同研究課題を推進するため、メンバー少人数によるタスクフォースを編成し、速やかに研究成果を生み出すようにする。例えば、これまで実験時に集めた心理学的調査の結果について、竹村と中丸が心理学的手法を前提とするシミュレーション分析を実施する。さらに、現地住民の文化的・宗教的な背景を前提とする社会構造において、河野、里見、中丸が文化人類学的手法をシミュレーション分析に生かす方向性を議論する。
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