本研究では、全国1700余りの地方自治体の発注した公共工事の入札結果を集めて、これまでにない大規模なデータセットを構築し、入札談合の理論・実証分析を行った。具体的には、1)談合をデータから識別する新しい手法を提案し、2)疑似実験等の統計的手法を用いて、繰り返しゲームの理論研究で示唆された談合の成立・維持・崩壊メカニズムの検証を行った。1)で提案した談合の識別手法は、企業ごとの談合参加の有無などに関して、既存の手法よりも高い精度で判定することができ、競争当局や企業のコンプライアンス部門が談合をデータからスクリーニングするという新たな実務分野を開拓することが期待される。また2)については、その結果を繰り返しゲームの理論分析にフィードバックすることを通じて、理論研究を一層発展させることが可能となり、さらには談合を抑止する入札制度設計に応用されることが期待される。
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