研究課題/領域番号 |
18H03651
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
杉澤 秀博 桜美林大学, 大学院 老年学研究科, 教授 (60201571)
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研究分担者 |
原田 謙 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (40405999)
杉原 陽子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (80311405)
柳沢 志津子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (10350927)
新名 正弥 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (70312288)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会階層 / ライフコース / 高齢者 / 透析患者 / 媒介要因 / ステレオタイプ / 健康 |
研究実績の概要 |
社会階層による健康格差のメカニズムとその制御要因の解明:①口腔健康の社会階層による格差が指摘されているものの、そのメカニズムは明確でない。本研究では、都市部に居住する高齢者における社会階層による口腔健康の格差を、心理社会的要因が媒介するか否かを分析した。媒介要因の候補としては、社会生態学モデルを用いて、自尊感情、うつ症状、社会的支援を設定した。分析の結果、特定の社会心理的要因の有意な媒介効果を確認できなかった。一方で社会心理的要因全体では年収と口腔健康の媒介要因として有意な影響がみられることが明らかとなった。②社会階層による差別経験の違いによって社会階層による健康格差が生じている可能性が指摘されている。本研究では、低階層の人々の間では否定的なステレオタイプに暴露される結果として年齢差別の経験が多いという仮説を立て、その検証を試みた。分析の結果、低学歴の高齢者では年齢による差別経験がある割合が高く、仮説を支持する結果が得られた。③高齢期の健康習慣については、高齢期の社会的ネットワークによって影響を受けていることが明らかにされているものの、ライフコース上の社会的ネットワークの健康習慣への影響についての解明はほとんどない。本研究では、ライフコース上の社会的ネットワーク上の健康習慣が高齢期の健康習慣に与える影響を分析した。ライフコース上の影響のモデルとしては、潜在効果モデル、経路モデル、移動モデル、蓄積モデルを用いた。分析の結果、経路モデル、移動モデル、蓄積モデルがそれぞれ高齢期の健康習慣の説明に妥当なモデルであり、ライフコース上の社会的ネットワーク上の健康習慣が高齢期の健康習慣に影響していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 社会階層移動の健康への影響:2017年度に全国55歳から64歳の男性2,500人を対象とした訪問面接法を実施した。当初の予定では、この調査の完了者を対象に2020年度に縦断調査を実施する予定であったが、新型コロナの感染蔓延の影響で実施を延期した。 この完了者を対象とした追跡調査を2021年度に実施した。 2) ケアマネジャーの介護サービスの調整における経済的問題の影響:次年度に、担当する地域の高齢者の社会経済階層の違いによって、ケアマネジャーによる介護サービス調整に差が生じるか否かを解明するための調査を実施予定である。そのための準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1) 社会階層による健康格差のメカニズムとその制御要因の解明:2022年度が本研究プロジェクトの最終年度である。新型コロナの感染拡大の影響により、2016年度に実施した調査の回答者に対する縦断調査の実施を2年延期した。この縦断調査は2021年度に終了したため、この縦断調査のデータを利用し、社会階層⇒社会心理的要因⇒健康・保健行動の因果メカニズムおよび健康格差の制御要因を解明する。 2) 社会階層移動の健康への影響:2022年度が本研究プロジェクトの最終年度である。新型コロナの感染拡大の影響により、社会階層移動の健康への影響を評価するための縦断調査を1年延期した。2021年度に縦断調査を完了したが、この縦断調査のデータを利用した分析が遅れている。データのクリーニングを速やかに終了し、分析を開始する。 3) 介護サービスの調整における経済的問題の影響:高齢者の社会経済的な水準が異なる都内複数区の介護支援事業所に勤務するケアマネジャーを対象とした量的調査を速やかに実施する。さらに、量的調査に基づき、サービス調整に経済的な問題がどのように関係するか、そのプロセスを解明するための質的調査の対象者を選択し、質的調査を実施する。
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