研究課題
本研究は視覚障碍者,特に全盲者の触知手段を向上させる触知ソフトウェアの開発を行い,それを用いて視覚障碍者自身でオブジェクトの認識や形状の理解ができるようにすることを目的としている。これを達成するために,1年目(2018年度)は計算機内に図的情報や形状情報から構成された仮想オブジェクトを生成し,2年目(2019年度)は触覚提示や力覚提示からなる仮想オブジェクトの形状伝達を作成した。3年目(2020年度)は2次元や3次元の基本形状を合成・分割することで生成した仮想擬似オブジェクトの形状伝達から,環境内にある対象オブジェクトの認識や理解が可能か否かを検討した。そして,最終年度である4年目(2021年度)は仮想擬似オブジェクトに対する触知の検出や分析に有効な触察時の脳賦活を追跡した。理由は触覚や聴覚などの代替感覚が,視覚障碍者の脳内では視覚野に影響を及ぼしているからである。視覚障碍者(特に視覚体験の記憶すらない先天盲者)にとって形状の概念形成は難しい問題である。しかしながら,近年の脳における可塑性と機能補償の研究から,視覚情報の処理を行う視覚野が他の感覚野から影響を受けていることが分かってきた。すなわち,触察(代替感覚である触力覚を用いた形状理解)時の脳活動を観測することは仮想擬似オブジェクトのイメージ獲得過程を分析する上で有効である。最終年度では,視覚障碍者の触察における一次体性感覚野(触力覚情報の効果)や聴覚野(聴覚情報の効果)を追跡すると同時に視覚野を分析することで,オブジェクト形状伝達手法の評価にとって脳活動計測は有効な補助手段になることを確認した。仮想的に生成した擬似オブジェクトを感覚代行機器で触察する際の脳活動を正確に可視化できれば,触知による視覚障碍者のオブジェクト認識手段を向上させることができ,擬似的な触力覚による視覚障害補償支援の有用性を確認できると考えている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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