研究課題/領域番号 |
18H03666
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
苧阪 満里子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報工学研究室, 主任研究員 (70144300)
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研究分担者 |
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
内藤 智之 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90403188)
苧阪 直行 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (20113136)
坪見 博之 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (70447986)
源 健宏 島根大学, 学術研究院人間科学系, 准教授 (40611306)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワーキングメモリ / 安静時ネットワーク / デフォルトモードネットワーク / 社会脳 / fMRI / 深層学習モデル / fNIRS |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、自己と他者を結び、豊かな社会性を支える社会脳の働きを解明することである。社会脳を支える脳基盤の解明には、特定の領域の活動の特徴だけでなく、脳の領域間の連携を解明することが必須であるとともに、認知脳との相互作用の中で機能する可能性についても検討する必要があると考えられる。そこで、認知脳の中心となるワーキングメモリの遂行に伴う脳の活動を中心に研究を進めた。 まず、脳の安静時ネットワークであるデフォルトモードネットワークとワーキングメモリネットワークとの相互作用を探索するため、安静時ネットワークについて、ワーキングメモリの個人差がどのように表現されるかを調べた。そして、個人差がネットワークのconnectivityと関わる知見を得た。さらに、注意の切り替えに関わる頭頂領域とネットワークとの関係を検討して、頭頂領域と関わるネットワークがワーキングメモリの遂行に影響することがわかってきた。 さらに、深層学習モデルを用いて、ワーキングメモリ機能をニューラルネットワークモデルに実装する試みが、視覚性ワーキングメモリのモデルに基づき試みられた。本年は脳波実験とディープニューラルネットによる解析を進めた。ここで推定されたモデルが、視覚性ワーキングメモリの容量制約が引き起こされる脳機序を解釈する可能性について検討した。 また、安静時の脳内ネットワークについては、fNIRS(機能的近赤外分光法)による安静時脳活動計測からも検討された。そこでは、社会脳領域の特性について理解を深めるために、自己参照課題を課し、自己や他者について考えている際の脳活動をfNIRSにより計測した。 加えて、ワーキングメモリ機能に対する社会的要因の影響に関して検討を加えた。また、ワーキングテストバッテリの開発に向けて準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会脳は認知脳との相互作用の中で強化されると考えられ、認知脳の中心となるワーキングメモリネットワーク(WMN)と、安静時ネットワークの中心となるデフォルトモードネットワーク(DMN)の相互作用がとくに重要である。本研究では、社会脳の健全な維持を目指すために、社会脳と認知脳の相互作用を健全化することが一つの大きな目標である。そこで、認知脳の重要なネットワークであるワーキングメモリネットワークと、安静時ネットワークの中心となるデフォルトモードネットワークの動的相互作用を解明し、その健全化を図ることが大きな目標である。現在のところ、fMRIによる脳活動データをネットワーク解析して、両ネットワークの安静時における、相互作用の特徴を捉えることが可能となった。また、fMRIからのアプローチだけでなく、fNIRSや脳波を用いたアプローチからも社会脳と認知脳の相互作用を解析する試みも始めている。さらに、ワーキングメモリ機能をニューラルネットワークモデルに実装する研究にも、挑戦している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ワーキングメモリネットワークとデフォルトモードネットワークの動的相互作用を、安静時から課題遂行時、特にワーキングメモリ課題遂行時にも広げて、そこでの両ネットワークの相互作用を解明する計画である。また、その相互作用をワーキングメモリの個人差に基づき特徴を明瞭化することにより、高齢者におけるワーキングメモリの低下などに対して、その健常化を図ることを目標とする。さらに、ワーキングメモリ機能をニューラルネットワークモデルに実装する研究も同時に進行させる計画である。このニューラルネットワークモデルの構築は、今後さらにワーキングメモリ容量の個人差を説明するモデルの作成へと発展させることを計画している。加えて、自発性脳活動にも注目して、それと両脳ネットワークの相互作用を明らかにすることにも今後の研究計画としている。
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備考 |
苧阪満里子、2018、「生理心理学と精神生理学 第III巻 展開」、北大路書房、編集 苧阪満里子、2018、「NHKガッテン! 2018年 夏号」(編集部企画 最新研究インタビュー2 脳科学の最前線から 「脳内ネットワークが、脳の老化を防ぐ」)、主婦と生活社、pp. 32-33
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