研究課題
社会脳は自己と他者を結び、豊かな社会性を支える脳の働きである。本研究計画では、社会脳を支える脳基盤解明には、特定の脳領域の活動および脳の領域間の連携を解明することが重要であると考えた。そこで、脳ネットワークの中でも認知脳の中心となるワーキングメモリネットワーク(WMN)と、安静時ネットワークの中心となるデフォルトモードネットワーク(DMN)の相互作用を解明することを目標とした。研究代表者苧阪満里子は、両ネットワークの相互作用の特徴を解明するため、ワーキングメモリの資源容量の個人差に焦点を当てて、課題遂行時における両ネットワークの競合と協調の動的相互作用の個人差を明らかにすることを目標とした。fMRIを用いて、安静時とワーキングメモリ課題遂行時の脳活動を測定することにより、DMNとWMNの特徴が、ワーキングメモリの高得点群と低得点群でどのような違いがあるのかを探索した。結果、高得点群では低得点群に比較して、安静時にDMNの活動が高くなる知見を得た。ワーキングメモリの脳内機構の個人差については、共同研究者の源がfNIRSを用いた安静時ネットワークの検討を実施し、個人差が安静時の脳内機構に見いだされる結果を得ている。内藤はAIを用いて、こうした脳内ネットワークの表現の可能性について検討を進めた。また苧阪直行は、ワーキングメモリの安静時と意識との関係に取り組み、瞑想時の脳活動についての研究を実施した。齊藤は個人差評価法の精密化を行った。また坪見は視覚性ワーキングメモリを用いて刺激の統合化過程を明らかにした。こうしたワーキングメモリの個人差とその差を生み出すネットワークを意識、記憶、統合の側面から明らかにすることをさらなる課題とする。
3: やや遅れている
新型コロナの影響により、人を対象とする実験が困難になり、fMRI実験などの脳内基盤研究、行動指標実験が困難になった。
安静時とワーキングメモリ課題遂行時のfMRI測定データに対して,ネットワークの構造分析を行い、安静時とワーキングメモリ課題遂行時とを比較することを、高齢者についても検討を行う。また、社会性に関わるワーキングメモリ(社会性ワーキングメモリ)の評価法の開発に取り組む。社会性ワーキングメモリと認知性ワーキングメモリ課題を開発して、それぞれの個人差がどのように関連するかを調べることにより、社会脳と認知脳の相互作用を探索する。さらに、ワーキングメモリ課題を遂行時の脳機能をAIにより実現化する。人を対象に課題遂行した時と、AIによるワーキングメモリの課題処理過程とを比較する。視覚性ワーキングメモリの特徴についても脳波測定から検討した結果をまとめる。社会性ワーキングメモリと中央実行系機能とのかかわりや、その個人差の脳基盤もfMIRS測定結果をまとめることを計画する。
すべて 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
Psychological Science
巻: 33 ページ: 816-829
10.1177/09567976211055375
Scientific Reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-98848-2
NEUROLOGY 脳神経内科
巻: 94 ページ: 178-185
Frontiers in Psychology
巻: 12 ページ: 709601
10.3389/fpsyg.2021.709601
Psychologia
巻: 63 ページ: 20-41
10.2117/psysoc.2020-A112
Vision Reseaerch
巻: 185 ページ: 68-76
10.1016/j.visres.2021.04.003
arXiv
巻: 2103.02587 ページ: 1-28
10.48550/arXiv.2103.02587