研究実績の概要 |
当該研究代表者が主導してきた「分岐則の理論」「緩増加等質空間の理論」のプロジェクトを海外の共同研究者等と協力して研究を進めた。以下で本年度の主要な結果を述べる。 (1)(分岐則の重複度に関する有界性定理) 簡約リー群の2つの無限次元既約表現のテンソル積の重複度は無限になりうる。より一般に、対称対に関して無限次元の既約表現を制限するとその重複度は有限とは限らない。当該研究者は、従前の研究で、この重複度の有限性が常に保証されるような対称対を超局所解析を用いて特徴づけ(小林-大島 Advances in Mathematics 2013), さらにそのような対称対を完全に分類した(小林-松木, Transformation Group 2014).一方、Weil表現に関するテータ対応のように、Gelfand-Kirillov次元が小さい表現については重複度が有界にとどまる可能性がある。本研究では、従前の結果を精密化するため、表現πと対称対(G,H)に関する条件として、いつ重複度が有界性をもつかについての種々の定理を証明した(第一論文) (2)(緩増加等質空間の判定条件)二乗可積分函数全体のなすヒルベルト空間上に定義されたユニタリ表現が緩増加となる等質空間G/Hを緩増加等質空間という。Gが簡約リー群でHがその代数的部分群の場合に等質空間G/Hがいつ緩増加性になるかの判定条件を発見しそれを論証した。その手法は、研究代表者と海外の共同研究者が開発した非可換力学系手法に加え、2つの群作用を持つ測度空間にdominanceという半順序を導入し、その基本的性質をユニタリ表現論を用いて解明するという新しいアイディアによるものである(第2論文)。
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