研究課題/領域番号 |
18H03673
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角五 彰 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10374224)
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研究分担者 |
小長谷 明彦 東京工業大学, 情報理工学院, 特任教授 (00301200)
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
勝本 之晶 福岡大学, 理学部, 教授 (90351741)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体分子機械 / 集団運動 / 高速数値シミュレーション / 熱力学 / 動力システム |
研究実績の概要 |
本研究では、生体分子機械(微小管・キネシン)における1)集団運動の発現機構、2)集団運動の構造的安定性、3)集団運動のエネルギー収支を微視的および巨視的な観点から統一的に理解することを目的としている。これらの知見をもとに生体分子機械による革新的動力システムの合理的な設計指針を提案する。具体的な研究課題は以下のとおりである。課題①生体分子機械の集団運動を支配する制御因子の探索とその安定性の評価、課題②高速数値シミュレーション技術を用いた生体分子機械の形態予測、課題③生体分子機械による集団運動の熱力学的考察。昨年度は、微小管の集団運動がどのような制御因子によって支配されているのかを統一的に理解するためこれまでに得られている時系列データーを相関解析や平均二乗変位量などで解析し集団運動の運動特性を評価した。さらに評価したデーターをもとに集団運動と制御因子との関係を数式を使っての一般化を行った。さらに集団運動する微小管の構造的な安定性を評価するため、引張や圧縮などの力学的な摂動を印可可能な実験系のセットアップならびに力学的な摂動に対する集団運動の応答性を評価した。さらに実験系における制御因子の統一的な理解に向け、微小管による集団運動を実時間で再現するシミュレーションシステムの開発を行った。実時間シミュレーションは演算装置(GPGPU)を用い、微小管の可視化は粒子を構成要素としたボールスプリングモデルを用いた。また集団運動の熱力学的考察に向け、主要な物理的なパラメーターの絞り込みも行った。具体的には集団運動する微小管から正味の仕事として取り出せるエネルギー量の見積もりおよび仕事効率を主要パラメータとした。前者は、ATPの加水分解によって得られるエネルギー量をもとに、後者は集団運動の異方性を表す秩序パラメーターによりエネルギー量を分配することで評価を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた生体分子機械の集団運動を支配する制御因子の探索とその安定性の評価、高速数値シミュレーション技術を用いた生体分子機械の形態予測、生体分子機械による集団運動の熱力学的考察など、予定した計画通りに研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、生体分子機械における1)集団運動の発現機構、2)集団運動の構造的安定性、3)集団運動のエネルギー収支を微視的および巨視的な観点から統一的に理解することを目的としている。課題1)に関しては、実験系で指標とした制御因子(微小管の長さ、曲げ剛性、相互作用の程度)を考慮しながらキネシンを駆動し、開発済みの実時間可視化シミュレーションを用い、数万本規模の微小管の形態予測を行う。集団運動発現に必要となる引力相互作用は微小管間にレナード‐ジョーンズ型のポテンシャルを働かせることで導入することとする。シミュレーションと実験結果を比較しながら制御因子の統一的な理解へとつなげる予定である。課題2)に関しては、開発済みの力学ストレス印可装置上で集団運動を発現させるとともに、その集団運動に歪、歪速度、伸張パターンを系統的に変化させながら力学的ストレスを印加し、その結果生じる運動特性の変化を相関解析や平均二乗変位量などの解析することで安定性の評価を行う予定である。課題3)に関しては、集団運動する微小管から正味の仕事として取り出せるエネルギー量の見積もりおよび仕事効率を算出することで熱力学的な観点から考察を行う。正味の仕事として取り出せるエネルギー量は、ATPの加水分解によって得られるエネルギー量をもとに、仕事効率は、秩序パラメーターを全微小管の平均角度を画像解析により求める。様々な集団運動に関して統計的な解析を行いながら系のエネルギー収支を明らかにしていく。さらに本年度は、上記3課題を総括し革新的動力システムの合理設計に向けた指針を提案する。
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