研究課題/領域番号 |
18H03677
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
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研究分担者 |
小原 祐樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10752032)
伊藤 宙陛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60724127)
伊藤 輝将 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任講師 (60783371)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベクトル波形整形 / 時間分解円偏光二色性分光 / 時間分解振動光学活性測定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、キラル電場波形パルスを物質に照射した際に、物質のキラリティーに依存した光学応答が観測されるか、さらには、物質のキラリティーが動的に誘起できるかの検証実験を行うことである。2018年度の当初計画通り、「時間分解円偏光二色性分光装置の製作」および「時間分解テラヘルツ帯振動光学活性測定装置の製作」を行った。 まず、開発済みのベクトル波形整形器と組み合わせて、分子の電子状態の異方性に基づいて試料のキラリティーを測定するポンプ・プローブ型時間分解円偏光二色性分光装置を完成させた。プローブ光に直線偏光を用い、透過光の左右円偏光成分を波長板と偏光子を用いて空間的に分離する新しい手法を用いた。開発した装置を用いて、光学活性なルテニウムトリスビピリジン錯体の時間分解円二色性測定を行い、400nmのポンプパルスで励起されたルテニウム錯体の動的キラリティー変化を捉える事ができた。 これに加えて、ベクトル波形整形器において任意波形整形された近赤外域パルスを非線形光学結晶によって任意の偏光状態をもつテラヘルツ帯ベクトル波形整形パルスに変換し、その任意偏光テラヘルツ波で誘起された動的な光学活性を振動分光により測定する、時間分解テラヘルツ帯振動光学活性測定装置を製作した。特に、任意の左右円偏光テラヘルツパルス対をポンプパルスとする新たな原理のベクトル波形整形器を、台湾国立交通大学のChih-Wei Luo教授と共同で開発した。 偏光分割マイケルソン干渉計を用いて、偏光方向の異なる二つのパルスを左右円偏光に変換させたのち、その左右円偏光パルスを干渉させる。これによって、テラヘルツ帯の中心周波数が約1~5 THz、テラヘルツパルス対間の遅延時間が3~7 psでそれぞれ独立に調整可能であり、円偏光の向きを任意に設定できるポンプ・プローブパルス対の波形を生成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度の当初計画にあった「生体関連分子の振動光学活性測定」にまで着手できなかった点から、進捗はやや遅れていると判断した。ただし、この計画は2020年度に実施予定の「ベクトル電場波形整形パルスによる実時間動的キラル構造制御」に向けた予備実験であることから、次年度以降に実施するのでも、全体計画に大きな支障はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度には「時間分解円偏光二色性分光装置」および「時間分解テラヘルツ帯振動光学活性測定装置」の製作まで完了していることから、次年度以降には、この装置をアミノ酸や蛋白質等の生体関連分子の振動光学活性測定に活用する予定である。 2019年度の当初計画は、「キラル電場波形パルス照射による結晶キラリティーの実験的観測」および「テラヘルツ帯任意偏光パルス照射による結晶キラリティーの実験的観測」である。これは、分子キラリティーの動的制御に向けて、より実験的に難易度が低いと考えられる固体結晶中での結晶キラリティーの実験的観測を企図した計画となっている。2019年度には、開発したベクトル波形整形装置を励起光源とした、動的キラリティーの観測実験を推進する。
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