研究課題/領域番号 |
18H03687
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
|
研究分担者 |
高島 圭介 東北大学, 工学研究科, 助教 (70733161)
宮本 浩一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70447142)
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (10272262)
立川 正憲 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (00401810)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 気液界面プラズマ / 短寿命活性種 / 細胞応答 / 高速液流 / マイクロ流路 |
研究実績の概要 |
本研究では,気液界面プラズマで生成される活性種を寿命で区別して細胞に作用させる技術を確立し,「極短寿命活性種」による細胞応答の機序解明と生命機能制御の学術基盤を創成することを目的としている. 1.気液界面プラズマで生成される極短寿命活性種の選択計測手法の確立:初年度は,直径0.1mm程度の開口から純水および導電性液体を高速で噴射(10m/s以上)する装置を製作し,その高速液流中で極短寿命活性種の計測を蛍光プローブを用いて行った.テレフタル酸を高速液流中に導入し,極短寿命活性種のOHラジカルと反応して形成されたヒドロキシテレフタル酸の蛍光強度を観測することで濃度を算出した.その結果,OHラジカルが高速液流界面の10nmという極薄層で30mMの高密度で生成されていることを明らかにした. 2.高速液流への高密度短寿命活性種供給気液界面プラズマ発生技術の開発:初年度は,第一に,高速液流に高エネルギーイオン・電子を照射することで液相界面に高密度活性種を生成する実験を実施した.具体的には,液流ノズルから噴出させた導電性液流を電極として放電させることで,高速液流の極近傍でプラズマを発生させ,高密度のOHラジカルを液流界面に生成することに成功した.第二に,液流ノズルと円筒電極間で放電させることで,高速液流として純水を用いてプラズマを生成することに成功し,気相中のガス種を変化させることで,高速液流に供給する短寿命活性種の組成を制御できることを示した. 3.高速液流中の短寿命活性種の細胞への選択的作用手法の確立と細胞応答機序解明:初年度は,微小流路内に高速液流を流して,その流路途中に細胞を配置できる実験装置の作製を行った.さらに,プラズマ生成位置から下流に向かって,リアルタイムに活性種を計測できるように,光アドレス型半導体化学センサを用いて,高速で水素イオン濃度を計測するシステムを構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高速液流中で生成される極短寿命活性種の計測に成功し,さらにその濃度を精密に算出することで,当初予想していなかったOHラジカルの局所的な空間分布と30mMという高密度での生成が明らかとなった.さらに,高密度の極短寿命活性種を生成するために,初年度は高速液流として導電性液体を用いた実験のみを計画していたが,液流ノズルを電極として円筒電極との間で放電させることで高速液流として純水を用いたプラズマ生成を実現し,当初の計画に予定されていなかった高速純水流中での極短寿命活性種の生成に成功した. 以上の理由により,当初の計画以上であると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえて,今後は以下の研究を推進する. 1.気液界面プラズマで生成される極短寿命活性種の選択計測手法の確立:初年度に,純水および導電性液体を高速で噴射した高速液流中で,蛍光プローブを用いて極短寿命活性種の計測を行うシステムを構築した.2年目は,紫外領域に吸収を持つOHラジカルおよび可視域に吸収を持つ水和電子の吸収分光を高速液流中で行うシステムを構築する.このとき,本システムでは吸光経路が極めて短いため,測定感度を向上させる目的で,レーザーキャビティリングダウン分光法(CRDS)による検出を試みる. 2.高速液流への高密度短寿命活性種供給気液界面プラズマ発生技術の開発:初年度は,生理食塩水などの導電性液体に直流電圧を印加することで放電させ,イオンおよび電子をエネルギー制御して高速液流に照射した.2年目は,「帯電反転制御プラズマ」を用いる.これは純水で利用できる大気圧での気液界面プラズマであり,ナノ秒パルスにより生成される気液界面の気相側を伝播する電離波現象を利用する.大気成分由来の活性種を気液境界で生成するため,種々の活性種を高密度に生成でき,直接的に高速液流中に供給できる. 3.高速液流中の短寿命活性種の細胞への選択的作用手法の確立と細胞応答機序解明:初年度は,微小流路内に高速液流を流して,その上流端に高圧プラズマ照射部を設置し,流路途中で水素イオン濃度の計測を行った.2年目は,各寿命の活性種を計測するとともに,それらの活性種に対する細胞応答を調べるため,微小流路内に細胞を同様に流すことで,極短寿命活性種の細胞への影響を明らかにする実験を行う.細胞導入路の流路内位置を変更することで,極短寿命活性種の細胞への作用を明らかにできる.また,活性種の分解・捕捉を行うスカベンジャーを下流で導入することで,長寿命活性種の影響を切り分けることが可能となる.
|