研究課題/領域番号 |
18H03689
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 仁 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (90183863)
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研究分担者 |
前川 孝 京都大学, エネルギー科学研究科, 名誉教授 (20127137)
打田 正樹 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (90322164)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無誘導立ち上げ / 電子バーンスタイン波 / 電子ビーム入射 / 球状トカマク / オーバーデンスプラズマ |
研究実績の概要 |
(1) 熱陰極型電子銃の設計、製作を行った。内径φ9 x 長さ23mm の放電セル内に水素ガスを導入し、そこに 1 kV の高電圧をかけてアーク放電を行う。そのために必要な IGBT 制御による高電圧パルス電源を設計、製作し、テストを行った。さらに、このアーク放電プラズマセルに最大 -20 V の負電圧をかけるようにするため、高圧電源および制御回路を絶縁し、光通信で制御できるシステムを構築した。 (2) 真空紫外から軟X線領域に感度を持つ AXUV 検出器列を用いたピンホールカメラを用い、最大 1.2 MS/sのサンプリングレート、16 bitの電圧分解能でデジタイズ可能な高速A/Dコンバーターを追加導入して、電子ビーム入射時の制動放射X線強度分布の時間変化を測定できるように整備した。また、昨年度導入した 32ch磁気プローブアレイの信号をもとに、フィラメント法による電流分布の推定を行う解析プログラムを作成した。 (3) LATE 装置下部ポートに、H2 ガスを噴出可能な小型電子銃を設置し、2.45 GHz マイクロ波を用いて無誘導で立ち上げたオーバデンスプラズマに対して、最大 -12kV の負電圧を電子銃に印加して、電子ビーム入射実験を行った。電流制御用の直列抵抗をいろいろ変えて電子ビーム電流を制御する試みを行った。 (4) 電子密度の上昇に伴い電子銃のインピーダンスが急激に減少して電子ビーム電流が増大し、パルス幅が短くなってしまうことが判明した。一方、電子銃のインピーダンスが高く、電子密度の急激な増加が抑えられる時間帯もあることを見出した。この条件が維持できれば、安定な電子ビーム入射が可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
* 計測器の開発・整備を進めることにより、電子密度分布の変化、プラズマ発光分布の変化が詳しく測定できるようになり、電子ビームの効果で 0.1 msec 以内に閉じた磁気面内の加熱が起こる様子が観測できるようになった。着実に実験データを積み上げることができている。 * 電子密度の上昇に伴い電子銃のインピーダンスが急激に減少して電子ビーム電流が増大し、パルス幅が短くなってしまう問題が生じた。これを解決するために、コンデンサーバンクの増設を検討した。しかし、電子銃インピーダンスを上げない限りは、予算内で増設をしても、十分なパルス幅が期待できないことがわかった。一方、実験を進めたところ、電子銃のインピーダンスが高く、電子密度の急激な増加が抑えられる時間帯もあることがわかり、この状態を維持できれば、現状のコンデンサーバンク容量のままでも、電圧を維持してパルス幅を伸ばすことができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
* 引き続き、計測器の整備を行い、高時間分解能で空間分布を測定し、電子ビームの入射軌道、および、その拡散の様子を捉えて、電流マージングの機構を調べる。 * 電子銃インピーダンスのコントロールと電子ビーム入射時の電子密度制御が重要であることから、更なる電子銃の改良を行うとともに、放電条件のサーベイ(トロイダル磁場強度、垂直磁場の強度とフィールドインデックス、水素ガス圧力、および入射マイクロ波電力を変える)を行って、電子ビーム入射と電子バーンスタイン波による加熱に対する影響を調べる。
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