研究課題/領域番号 |
18H03690
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
酒井 道 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (30362445)
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研究分担者 |
新戸 浩幸 福岡大学, 工学部, 教授 (80324656)
玉山 泰宏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50707312)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ / メタマテリアル / マイクロ波 / 赤外材料・素子 / 微粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマ複合構造体“メタプラズマ”のマルチスケール性・超広帯域周波数分散特性を基に、その高エネルギー性から生じる新奇物理を明らかにすることを目的としている。すなわち、プラズマ複合構造体は、構成要素であるメタマテリアルの効果により伝搬電磁波のエネルギー密度より数桁高い値を持つため、エネルギー平衡・エネルギー変換・非線形現象に特異性を備える。この性質に基づき、物理・工学の両面から“パワー・メタマテリアル”分野を確立するため、実験・理論の両面で研究を遂行した。 本年度の具体的な研究実績は以下の通りである。マイクロ波帯での検討においては、プラズマ-メタマテリアル複合体によるクローキング現象の実験実証および概念拡張を行った。構造体の背面部へのマイクロ波迂回現象のみならず、吸収・集光・散乱といった異なる現象をごく狭い周波数帯(2.6-3.1 GHz)において実現可能であることを確認し、プラズマ-メタマテリアル複合体ならではの多機能性を実証した。並行して、EIT様メタマテリアルの実験に関しても、プラズマ生成に対するメタマテリアル効果について線形・非線形特性の両面で検討を続け、携帯電話レベルのごく低電力でのプラズマ生成にも成功している。赤外光領域での検討については、新たに凝集体のサイズ効果を波長以下の領域で詳細に調べ、レイリー散乱とミー散乱のモード変化を確認し、可変性の新たな機能性を示した。粒子モデルコード開発としては、これまでに我々が開発済みのFDTD法コードを基にして作成した粒子モデルコードにより、波動伝搬と周波数分散の詳細についての実験結果が計算結果と一致することを示すことができた。 今年度についても、学術論文発表および学会発表を積極的に行い、プラズマ理工学ならびにメタマテリアル科学といった学術分野、両分野にまたがる学際分野の発展への寄与を目指して活動した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画に掲げていた、項目はすべて達成しており、さらに新規の成果を得ることができた。プラズマ・メタマテリアルが備える高エネルギー性に関わる成果が期待通りに得られるとともに、計画していなかった成果も多く確認され、研究を一層加速している。 特に、今年度の検討における大きな追加の成果として、バビネの原理の破綻に関する閾値導出が挙げられる。メタマテリアル分野の研究の基礎的な電磁気効果であるバビネの定理は、構造がごく薄い厚み(波長の1/30程度)を持つだけで破綻することを実験と理論計算の両面で実証した。 また、プラズマ-メタマテリアル複合体の新たな応用先の開拓にも資する研究を実施できた。我々は、ごく最近、半導体産業などで使用されるプラズマプロセス装置内の見守りに対して、マイクロ波帯の無線通信技術により内部投入センサをIoT(Internet of Things)化することに成功した。この技術に対しては、導体容器の外部にどのように無線信号を取り出すかがキーポイントとなるが、そのときに真空ビューポートの近辺に伝搬してきたマイクロ波を効率よくビューポートから外部に取り出す導波機能をプラズマ中に設置したメタマテリアルにより実現する必要がある。この部分に、プラズマ-メタマテリアル複合体と同様の構造が現れるため、本研究で実証されたマイクロ波導波効果を応用できる。 このように、本研究を核として、予想以上に多くの波及効果を伴って、研究成果の展開を図ることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は無く、交付申請書に記載の内容を遂行するとともに、より発展的な研究展開を行う。 特に、検討内容として、高エネルギーマイクロ波に対するメタマテリアル構造の頑強性を確保する検討について、引き続き検討を深化させる。これまで使用してきたメタマテリアルは、パルス化されたマイクロ波に対しての応答を調べてきたが、我々の今後の検討で、数10 W以上のレベルで連続波として伝搬するマイクロ波への耐性を実現したい。それにより、無線電力伝送技術において必要となる高エネルギーマイクロ波に耐えうる頑強なマイクロ波素子を、プラズマ-メタマテリアル複合体で実現し、「パワー・メタマテリアル」としての分野確立を目指したい。 また、荷電微粒子を用いた光制御の実験においては、レイリー散乱現象とミー散乱現象をまたいだパラメータ領域の包括的な理解とメタマテリアル効果を用いた応用について、引き続き検討する。
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