研究実績の概要 |
本研究ではシグマ陽子散乱実験およびラムダ陽子散乱実験を行い微分散乱断面積を導出することによって、ΣNおよびΛN相互作用の解明することが大きな目的である。シグマ陽子散乱実験(J-PARC E40)を2019年2月からΣ-pのチャンネルのデータ収集を開始し、2019年4月からΣ+pのチャンネルのデータ収集も開始したが、J-PARC加速器のトラブルによってΣ+pチャンネルの半分程度のデータ収集で一時中断することとなった。収集したデータ解析を行い、Σ-pチャンネルの解析ではΣ-p弾性散乱の事象を約5,000イベント同定し、またΣ-p→Λn反応の事象を約2,500イベント同定することに成功した。これは過去に実施された実験の約100倍もの事象同定数になる。これらの散乱事象数を断面積にするには、反跳陽子を同定するCATCH検出器の検出効率を正確に求める必要があるが、検出効率を決定するのに必要な陽子陽子散乱の校正データのエネルギー依存性が不十分であることが分かった。そのため、次のビームタイムで必要な校正データを収集するために、必要な陽子ビームのエネルギーをシミュレーションから見積もった。中断されたビームタイムは2020年の2月に再開する予定であったが、最終的には2020年の6月に再開されることとなった。このビームタイムで、上述した陽子陽子散乱の校正データの収集を行い、その後、Σ+pチャンネルのデータ収集を再開することで、予定していたデータ収集を無事に終了することが出来た。Σ+p弾性散乱事象についても5,000イベントを同定することが出来ており、これまでの断面積測定精度を格段に向上させることが出来るデータの収集に成功することが出来た。現在、微分断面積の導出に向けて解析を進めているところである。
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