研究課題
本研究ではシグマ陽子散乱実験およびラムダ陽子散乱実験を行い微分散乱断面積を導出することによって、ΣNおよびΛN相互作用の解明することが大きな目的で ある。シグマ陽子散乱実験(J-PARC E40)を2019年2月からΣ-pのチャンネルのデータ収集を開始し、2019年4月からΣ+pのチャンネルのデータ収集も開始したが、 J-PARC加速器のトラブルによってΣ+pチャンネルの半分程度のデータ収集で一時中断することとなった。加速器再開後の2020年6月にΣ+pチャンネルの残りのデータ収集を終えた。これまでに、2019年に収集したΣ-pチャンネルのデータ解析を進め、Σ-p弾性散乱及びΣ-p→Λn非弾性散乱の断面積の導出に成功した。過去の実験の精度から比べると、本研究では精度を圧倒的に改善することに成功した。これらの結果は、投稿論文としてまとめ、公表している。また、本研究のために開発した反跳陽子検出器システムCATCHについてもテクニカルペーパーとしてまとめ、公表している。これらとともに、Σ+p弾性散乱の解析も進展し、微分断面積を最終化するところまで来ている。次期実験として考えているΛp散乱実験に関しては、実験計画をプロポーザルとしてまとめ、J-PARCの課題採択委員会に提出した。シミュレーションによる研究を進めるとともに、検出器の開発を進めている。高レートビームに対して時間測定するために、MPPCアレイを用いた高セグメント化されたシンチレーターホドスコープの開発を行なっている。1セグメントを用いたテストで、十分な時間分解能を得ることができることを確認した。これとともにビームラインに設置するファイバー検出器の開発を行い、R&Dを行いながらXX'層の製作を行なった。
2: おおむね順調に進展している
この研究計画の目的であるΣp散乱の高統計での検出に成功し、当初予想していた程度の精度で微分断面積を導出でき、Σ-pチャンネルに関しては、投稿論文として公表することが出来た。同様に、Σ+pのチャンネルについてもすでに結果は最終的なものとなっている。Σ+pに関しては、ハイペロン陽子散乱で初めて、位相差解析を行い、散乱の位相差を導出することに成功したことも大きな成果であると考えている。このΣp散乱実験の成功によって、次期実験のΛp散乱実験についても注目されている。バリオン間相互作用の理論研究者とも共同し、相互作用解明の流れを新たに作ることが出来ている。
まずは、Σ+pチャンネルの結果を投稿論文としてまとめるべく、努力する予定である。また、E40実験で、バイプロダクトとしてデータ収集したπ-p→K0Λ反応のΛのスピン偏極のデータについても、解析を進めている。このπ-p→K0Λ反応は、次期Λp散乱実験において、Λビームの生成反応として用いる予定であり、過去のデータから、Λが生成平面に対してスピン偏極することが知られている。E40で収集したデータで、Λの偏極量をΛから崩壊する陽子の上下非対称度から測定しており、確かに高いスピン偏極をしていることが確認された。次期Λp散乱実験では、このスピン偏極したΛビームを用いて、微分断面積に加えて、スピン観測量も測定する予定であり、E40のデータは、このための基礎データとなる。検出器開発に関しては、本研究ではビームラインに設置する高セグメントのホドスコープ及びビームラインファイバートラッカーの製作を目指す。それぞれ基礎的なR&Dで良い成果を得ることが出来ているので、実機製作を今後は進める予定である。
すべて 2022 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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