研究課題/領域番号 |
18H03694
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
宮地 義之 山形大学, 理学部, 教授 (50334511)
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研究分担者 |
後藤 雄二 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任研究員 (00360545)
中野 健一 東京工業大学, 理学院, 助教 (20525779)
澤田 真也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (70311123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核子構造 / 陽子スピン / 反クォーク / ドレルヤン過程 / 偏極核子標的 / 軌道回転 |
研究実績の概要 |
米国立フェルミ加速器研究所(Fermilab)での偏極ドレル・ヤン散乱実験 SpinQuest により、偏極陽子内部での反陽子の軌道運動の振る舞いを明らかにし、陽子スピンに対する反クォークの役割の解明を目的とする。実験ではFermilab 120 GeV 陽子ビームと、世界初の大強度陽子ビーム対応偏極陽子・重陽子標的を利用する。 2019年度後期に予定されていたビーム実験開始にむけ、偏極核子標的システムの構築と検出器およびデーター収集システム整備を継続した。偏極標的システムでは強度 5 Tの超伝導電磁石、到達温度 1 Kの冷却システム、高出力 140 GHzマイクロ波システム、30~200 MHz NMRシステムにより構成される。前年度経費により調達品を利用し偏極標的システム準備をすすめた。検出器は先行実験である Fermilab-SeaQuest検出器の整備・再利用を行う。主要装置である大型荷電粒子検出器の調整、データ収集システムの構築を昨年度につづき継続した。 偏極標的システムに関するFermilabによる安全承認手続等に想定よりも時間を要し、計画進行に若干の遅れが生じていたものの、装置準備と平行して組織整備等もすすめた。ビームを利用した検出器最終調整を迎えようとしていた折、米国でのコロナ禍状況悪化により他研究機関同様Fermilabも閉鎖の措置を受けた。実験ホールでの作業人数等に制限をつける事で研究活動は限定的に再開されたものの、ビーム実験は2021年末へと延期された(2021年5月現在)。国内外での新型コロナ感染症対策に対応するため、計画を変更し国内において重陽子偏極標的の偏極度解析開発研究を中心として実験準備を重点的にすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Fermilab安全基準の更新により想定外の対応を求められた。そのために偏極標的、検出器、データー収集システム全体にわたり若干の遅延が生じている。 新型コロナ感染症対策のため、一時的には研究所封鎖、現在でも活動人数上限等への制限のもとでの実験準備がつづいている。陽子ビームを利用した測定も2021年末へと延期されている。 とはいえ、人数制限のもとでも大型荷電粒子飛跡検出器をはじめとする検出器の準備は宇宙線等を活用して着々とすすめられている。実験に参加している研究機関・大学等でもビーム実験時に必要となるオンラインモニターや物理解析のためのソフトウェア開発等は継続し、ビームタイムへの準備をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況が大きく変化しなければ、2021年末には陽子ビームを利用したコミッショニング・物理データ収集を開始する予定である。その時点での渡米制限におうじて研究計画を適宜調整し、柔軟に対応する。渡米可能であればFermilab現地において、検出器および偏極標的の運転・管理を行い安定した物理データ収集をめざす。渡米制限が維持される場合も想定し、検出器・偏極標的・データ収集等のリモートモニタ体制を整え、現地共同研究者との効果的な協力体制の構築をはかる。 また、ビーム実験終了をまたず物理解析結果の早期発表実現を目指し、解析手法のさらなる整備をすすめる。ビーム情報も含んだより現実的な検出器シミュレーションの開発を継続し、データ収集と平行しながら蓄積データの物理解析を行えるよう目指す。
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