研究課題/領域番号 |
18H03695
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小沢 顕 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80260214)
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研究分担者 |
山口 由高 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 技師 (40415328)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原子核の質量 / 蓄積リング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、理研RIビームファクトリーの稀少RIリングを使って、最近、続々と発見されている中性子過剰中重核領域のハロー核候補の質量を測定することである。稀少RIリングでの質量測定での分解能向上と高効率化も重要な課題である。世界には、稀少RIリングのような不安定核の質量測定可能な蓄積リングが2台(ドイツGSIのESRと中国IMPのCSRe)ある。我々は、質量測定に関してこれらの研究グループとも共同研究を行っており、ESRとCSReでの質量測定実験に貢献することも重要である。2018年度は、本研究に関連した研究活動の結果、以下の成果を得た。1)2018年7月に中国IMPで行われた研究会に参加し、稀少RIリングおよびCSReでの質量測定実験について議論を行った。ここでの議論が、陽子過剰中重核領域での新たな稀少RIリングの質量測定実験プロポーザル採択につながった。2)2018年11月に稀少RIリングで、中性子過剰Ni同位体の質量測定実験および中性子過剰Sn同位体の質量測定実験を行った。我々の研究グループは、Ni同位体の質量測定実験を主導した。3)2018年12月に稀少RIリングでの質量測定に関して、中国北京で行われた国際ワークショップで口頭発表を行った。4)2019年1月に、IMPのCSReで行われた中性子過剰中重核領域の質量測定実験に参加し、測定実験に貢献した。5)稀少RIリングでの質量測定に使用する検出器の開発・整備などを進めた。特に、位置検出器と粒子識別検出器の増強を行った。これにより、稀少RIリングでの今後の質量測定実験が効率よく進められることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、稀少RIリングの磁場モニターとして、原子クラスターの導入を検討した。市販の原子クラスターイオン源としてArクラスターイオン源の検討を行った。結局、Arクラスターの寿命は、稀少RIリング内での飛行時間より短いということがわかったので、2018年度のクラスターイオン源導入は見送らざるを得なかった。2019年度は原子クラスターイオン源として、新たにアークプラズマイオン源の検討を始めている。 また、稀少RIリングの質量測定の高効率化、高分解能化のためにキッカー磁石の増強を行っているが、メーカー側の都合により、キッカー磁石部材の一部が、2018年度内納品に間に合わないことが判明した。この部材は、2019年度には購入された。 さらに、本研究では、中性子過剰中重核領域のハロー核候補の質量を測定するのが目的であるが、我々が主導して2018年度に行ったNi同位体の質量測定実験のデータがいまだに解析中である。Ni同位体の質量測定の結果を公表したのちに、中性子過剰中重核領域のハロー核候補の質量測定に進んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下を行う予定である。 1)磁場モニターとしての原子クラスターイオン源の開発では、2019年度からアークプラズマイオン源の検討を進めている。このイオン源では、基板上ではあるが、Wなど重金属のクラスター生成が確認されている。作成したテストベンチを利用してインフライトでのクラスター生成確認を行う。十分な量の重金属クラスター生成が確認できれば、稀少RIリングへの導入を検討する。2)質量のリファレンス核導入問題が解決できれば、実験条件等を検討した上で理研RIビームファクトリーに実験プロポーザルを提出する。3)これまでに、稀少RIリングで行った質量測定実験のうち特に、我々の研究グループが主導して行ったNi同位体の質量測定実験に対してデータ解析を進め、結果をまとめ論文等により公表する。4)稀少RIリングの質量測定の高効率化、高分解能化は、本研究でも重要である。キッカー磁石の増強を進め、入射と出射の効率を向上させるとともに、等磁性磁場の検討を進め、高分解能化を推進する。5)ESRおよびCSReでの質量測定実験等にも積極的に参加し、国際協力を進めるとともに、系統的な質量測定を推進する。
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