研究課題/領域番号 |
18H03697
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50313044)
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研究分担者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダークマター / 暗黒物質 / 液体キセノン / 純化 / ラドン / 低バックグラウンド / 中性子 |
研究実績の概要 |
ダークマター(DM)は、宇宙の観測から存在は確実なものであり、未知の素粒子としてその探索が続けられてきた。その謎を突き止めるため、実験規模を大きくし感度を高める競争が進行中である。本研究では、イタリアGran Sasso研究所に於ける国際共同研究XENONnT実験に参加し、建設・実験の遂行、データ解析を通じDM の発見を目指す。 直接探索実験の目標感度到達のためには、本研究による液体キセノンの純化による感度向上が重要となる。液体キセノン中の電気陰性度の高い不純物(酸素など)によって、ドリフトされる電子が捕獲されて十分な強度の信号が得られないことがある。これまでは液体キセノンをガス化して純化してきたが、検出器が大型になったためスピードが不足する。そこで本研究の新たな試み(独創性)は、ガスと液体では体積比が500:1となることに注目し、液体から直接酸素等の電気陰性度の高い不純物を低減するフィルターの評価・製作を行い、格段に純化のスピードを上げる点だ。加えて、検出器の性能を正しく理解するために不純物濃度を常時測定する純度モニターが必須だ。 本年度はコロンビア大学と共同研究し純化装置の導入に寄与を果たし、純度モニターも導入に成功した。我々の制作したモニターをXENONnT検出器に組み込み、試験運用を行って、高い精度で純度をモニターできたことは大きな成果だ。さらに日本グループ独自で開発した低ラドン放出型のフィルタ試験の準備も完了した。加えてラドン低減を目的としたドイツグループが開発した装置を含めた運転の準備にも貢献してきた。このように本研究の期待する物理目標へ向けて着実へ進展した。なおこれらの多くは、本科研費でサポートしている研究者がコンビーナーを果たす純化グループによって成し遂げられた。また、同研究者は機関代表者会議の共同チェアを務めてコラボレーションへの大きな貢献を果たしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年9月には検出器に使用する純化システムの試運転中に不測の故障が生じ、純化システムに真空漏れが発生していることが判明したため、当システムの改修が必要となった。研究遂行上、検出器の建設には純化システムが不可欠なため、当システムの故障部分の改修を行った上で再度試運転を実施する必要が生じた。そのため繰越を行い研究を進めた。その際コロナ禍の下で研究の進捗は見通せない状況であったにも関わらず、予定通りに純化システムの改修を進めることができた。我々の作成したモニターは期待通り動作し、さらに日本グループのメンバーの独自のアイディアで持ち込んだフィルタの試験の準備も完了できたことは本年度における当初の目標を達成できた。研究全体のスケジュールとしては少し遅れているが、マイルストーンを着実に達成して来ており、かつ独自性を発揮した貢献を開始することができた観点からは十分な進捗が得られてきたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進展により、暗黒物質検出器であるXENONnT検出器に液体キセノンを満たすことが可能になった。液体キセノンを満たした上で、これまでにない、液体を直接純化する技術を確立する。その際フィルタの第一候補はラドンの放出が多く、そのままではXENONnT実験の期間全体に渡って用いることができないため、日本グループが開発したラドン放出の少ないフィルタを用いて検証を行うことが重要である。これが確立すればこれまでにない暗黒物質探索の性能を発揮することができると期待されている。
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