研究課題
本研究はこれまで進展してこなかった中性子観測を手掛かりに、太陽フレアにおける粒子加速機構に迫るものであり、その鍵となるのが宇宙空間からの太陽中性子観測専用の超小型衛星による観測である。我々、中性子とガンマ線を同時に観測する独自のセンサを搭載し、3Uキューブサット(30cmx10cmx10cmの大きさの超小型衛星)をSOlar Neutron and Gamma-ray Spectroscopy (SONGS)ミッションと名付け、理工連携プロジェクトをスタートさせた。理学側は、ミッション観測装置である超小型高性能中性子・ガンマ線センサを開発する。初年度は基礎技術であるシンチレータ積層・アレイ化や超低消費電力の集積回路(ASIC)によるセンサ信号の読み出しを行うことを目標とした。センサをASICにより読み出し、性能が出せること、また要素試作モデル(BBM)となる独自設計の電子回路基板を製作し、センサ信号の読み出しに成功した。また、ASICの消費電力が我々の仕様を満たすことが分かった。一方、工学側は、ミッション機器からの要求を整理し,その要求を満たすためのバスシステムを設計した。設計したバスシステム仕様に基づき,実績品などから姿勢検出センサやバッテリ,通信機などの搭載機器を選定,それらの機能・性能・環境耐性についての評価を実施している。また,実装のための基板設計・製作・評価なども実施している。仕様を満たす候補品がない機器類である中央処理コンピュータや電源処理系,ミッションデータ処理コンピュータなどに対しては新規設計や,試作品の製作および評価も行っている。さらに,ミッション機器特有の熱的要求を満たすための熱設計も行った。その熱設計仕様を満たすための各種熱制御材料を評価し,機器制約に合わせた実装設計も検討している.その他、超小型衛星への関心を得るため、大学生・一般向けの2週間コース(基礎・上級編)を開講し、人工衛星や宇宙開発に関する裾野を広げる活動をしている。
3: やや遅れている
当初はキューブサットの早期打ち上げを目指すため、過去の超小型衛星などで実績ある衛星バスを採用し、それをもとに改良してすすめていく予定であった。その計画に従い、キューブサットの根幹となるオンボードコンピュータなどの装置の仕様調整を行っていた。しかし、我々の衛星とは電気的インターフェースが異なるため、その改良だけでも予算の超過が大きなものとなってしまうことが判明したことから、開発の方針を変更した。名古屋大学工学部の新たなグループと連携し、名古屋大学発のキューブサットを開発し、その2号機として我々のSONGSミッションを打ち上げるものである。その結果、ブラックボックス化しがちな衛星バスのシステムを我々自身の手で改良していくことが可能となる。これは、一見遠回りをしているように見えるが、長い目で見た場合に成功に近付くための近道であると考えている。その結果、キューブサットの打ち上げ時期を見直し、サイエンスとしても太陽活動の極大期となる2022年度としている。
研究方針の変更から、当初の予定よりも遅れたため、申請時のメンバーから、工学系・理学系そして名古屋大学の誇る技術職員を新たなメンバーとして加えてきた。これにより、衛星バス、ミッション機器の設計そして衛星構造・電気系・組立てに伴う技術的な課題の解消につながると思われる。またミッション装置側には、理学の大学院生によるセンサの基礎性能評価を行ない、センサ技術・性能に熟知した人材を育て、改良していくことが可能な体制を整えてきた。これらマンパワーの増強により、衛星開発をスムーズに行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 9件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 16件、 招待講演 1件) 備考 (5件)
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