研究課題/領域番号 |
18H03707
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
大谷 将士 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (90636416)
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研究分担者 |
近藤 恭弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 主任研究員 (40354740)
森下 卓俊 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (30370480)
二ツ川 健太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (50713153)
河村 成肇 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (60311338)
三部 勉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80536938)
飯沼 裕美 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (60446515)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミューオン / 加速 / g-2 / 異常磁気能率 / IH / RFQ / スピン |
研究実績の概要 |
本研究の目的はミューオン異常磁気能率(g-2)精密測定にむけた(1)ミューオン低速部加速空洞の開発、(2)ミューオンビームモニターの開発、(3)さらに加速中のミューオンスピン回転などの理解、制御を行うことである。 このうち(1)に関して、前年度までに実施した低速部加速空洞IH-DTLのプロトタイプの低電力試験結果に基づき、電力印加のための機器であるカプラーの試作機を設計、製作した。カプラー試作機で空洞との結合度を測定・調整し、実際に大電力を透過するためのカプラー実機の設計した。 (2)に関しては昨年度に実施したミューオン加速試験のデータ解析を行い、世界初となるミューオンのマクロバンチ構造の測定結果をまとめ、論文として発表した (Y. Sue, M. Yotsuzuka et al., Phys. Rev. AB, 23 (2020) 022804.)。 (3)について、ミューオン加速器におけるミューオン位置・運動量に加えてスピン自由度も評価するシミュレーションフレームワークを新たに構築し、ミューオン加速器全体でスピン偏極率の損失が限りなく小さくg-2測定に影響がないことを確認した。さらに、g-2測定の簡易シミュレーションを行い、加速後のスピン方向と運動量に相関があった場合に深刻な測定誤差が生じることを突き止めた。そこで、スピン回転システムに加え、加速中の運動量とスピンダイナミクス両方の評価が重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下の通り当初の予定通りに進展している。 (1)ミューオン低速部加速空洞IH-DTLに関しては、空洞試験の最終段階である大電力試験にむけた機器設計を完了することができた。当初の予定では今年度に機器製作まで完了する予定だったが、コロナの影響で材料調達が遅れ完成には至らなかった。一方で、大電力試験時において放電によって効率悪化の要因となる電子増幅現象について評価するシミュレーションを構築し、大電力試験でデータを取得してすぐにシミュレーションと比較できるような準備を整えることができた(国際学会J-PARC Symposium2019やJPS Conf. Proc. , 33 (2021) 011128などで発表)。 (2)ビームモニター開発に関しては昨年度の加速試験結果をまとめて論文として成果をまとめるとともに、ピコ秒レーザーによる時間分解能評価を進め、データ取得回路が分解能のボトルネックになっていることを突き止め(国際学会J-PARC Symposium2019やJPS Conf. Proc. , 33 (2021) 011040などで発表)、波形取得回路による分解能向上のための開発を開始した。 (3)ミューオン加速中のスピン自由度の評価に関しては、加速中のスピンダイナミクスを評価するシミュレーションを構築して偏極率を評価するとともに、ミスアライメントや加速器パワーなどのエラー要因によるスピンを含めたビーム品質の悪化を評価する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
ミューオン低速部加速空洞IH-DTLプロトタイプの大電力試験を行い、これまでにない低速ミューオン加速空洞の原理実証を完了する。 ビームモニターに関しては既にミューオン低速部加速器で必要な開発は完了しており、ミューオン高速部加速器で必要な分解能の達成にむけた開発を行う。 ミューオン加速度のスピン自由度の評価に関しては、ミスアライメントなどによって生じるビーム品質の悪化を調査するエラースタディを行い、g-2測定に深刻な影響を与える運動量とスピン方向の相関の発生に関して定量的に評価を行う。
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