研究実績の概要 |
理化学研究所RIBF加速器施設にて生成した不安定核ビームを使い、TES検出器にてトリウム-229超低励起状態から発生する数eV内部転換電子、及び第二励起状態から発生する30keV弱のX線エネルギーをFWHMで10eV以下の高精度で測定するため、重イオン飛行時間による分別装置とTES検出器とを組み合わせたシステムの設計・開発を進めた。 特にはTh-229第二励起状態から第一励起状態への遷移による高分解能でのX線分光を行うため、FWHM10eV以下で30keVのX線測定を目指したTESの開発を行った。具体的には最大100keV及び40keV相当のX線まで測定できる新型TESの開発をNIST主導のもと行った。 本課題における光のエネルギーは30keVと通常のX線エネルギーに比べて高く、これまでのX線吸収体ではその検出効率が著しく下がる事が予測される。硬X線への感度を高めるため、X線吸収体として金を採用し試作品の作成を進めた。 作成したTESは20~30keVガンマ線エネルギー程度の光測定を測定対象とする0.5~0.6mm角程度の大きさのものである。Mo Kα1による17.5 keVのX線をエネルギー測定解像度の評価に、Eu Kα1(41.5 keV), Kα2 (40.9 keV), Kβ1 (47.0 keV)のX線を検出器の線形応答性の評価に使用した。その結果、40keV弱程度までの線形性を確認し、17.5 keV X線に対して測定精度は6.9eVだという事がわかった。 また飛行時間分別装置に設置する電子検出器の設計を行い、崩壊電子測定用シリコン検出器の準備を行った。このシリコン検出器はAc-229からTh-229へベータ崩壊する際に発生する電子をTh-229第二励起状態からの30keV光子同定用トリガーとして使用する事を目的とする。このシリコン検出器を導入する事で、高いS/BでのTh-229由来の光子測定が可能となる。
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