研究課題/領域番号 |
18H03714
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡田 信二 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 協力研究員 (70391901)
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研究分担者 |
中野 祐司 立教大学, 理学部, 准教授 (20586036)
久間 晋 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50600045)
山田 真也 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (40612073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超伝導検出器 / TES / イオン蓄積リング / 原子・分子物理 |
研究実績の概要 |
本研究は、高分解能X線検出器として開発された超伝導遷移端マイクロカロリメータ「TES」を、低エネルギー中性粒子のエネルギー測定に応用し、新しい質量分析装置の確立を目指す。我々の開発した低温静電型イオン蓄積リング「RICE」に、低速中性粒子の検出器として多素子TESシステムを導入し、蓄積イオンと中性ビーム(又はレーザー)の合流衝突実験により、極限環境下に於ける衝突ダイナミクスの研究を行う。 2018・2019年度は、TESとRICEの接続部における技術的重要課題:1)差動排気、2)熱輻射遮蔽、に関して検討・試験を重ね、本接続部の設計・製作・設置まで行った。RICEは、低温(4 K)・超高真空(10^-10 Pa)環境下で動作させることにより、原子分子イオンの長時間周回を可能としている。一方、本TESシステムは、超伝導状態を維持するため極低温(~0.1K)まで冷却するが、真空度としては高真空領域に留まる。従って、1)真空度の差を吸収するための差動排気システムの構築、2)接続部(室温)からのTESへの熱輻射を遮蔽のための冷却システムの構築、が必須である。これらを同時に満たすため、4Kまで冷却可能なGM冷凍機を搭載した差動排気チェンバーを製作した。TES検出面(0.1 K)からRICEを見た視野角に、直接4K以上の高温部が含まれないよう、RICE-TES間に、GM冷凍機で冷却した2層(4K及び60Kステージ)の円筒状の輻射シールドを配置する。さらに、この円筒シールドと、チェンバー間真空配管部の径をできるだけ小さくし、本チェンバーに大容量ターボ分子ポンプを取り付けることで差動排気を実現する。製作・設置は完了しており、本差動排気システムによって、TESシステムを繋いだ状態で、RICEの通常運転が可能である事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における技術的重要課題「差動排気・熱輻射遮蔽」を実現するため、4K冷凍機を搭載した差動排気チェンバーの製作・試験まで行うことができた点は、大きな進展である。一方、中性分子ビーム生成システムの試験・製作も順調に進んでおり、TESを用いた中性ビーム合流衝突実験に向け、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の様な方策で、研究を推進する: 1) TES検出器を、熱輻射遮蔽及び差動排気システムを介し、低温蓄積リングに接続した状態で、検出器全体の基本動作試験・ノイズスペクトルの測定。必要に応じて、熱輻射対策(メッシュによる遮熱輻射蔽窓追加など)・振動対策(ベローズ等振動吸収材の追加)を施す。 2) 低温蓄積リングRICEよりイオンビームや中性分子フラグメントをTES検出器に入射させ、光子(X線)ではなく粒子(原子分子)の衝突による信号からのスペクトル応答関数やエネルギー分解能の測定を実施 3) 低温蓄積リングRICEへの中性分子ビーム生成システムの導入試験を実施
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