宇宙線加速機構の解明を目標として、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡と H.E.S.S. 大気チェレンコフ望遠鏡群を組み合わせた GeV から TeV にわたる広範囲のガンマ線観測、およびガンマ線放射天体のX線硬X線観測による研究を推進している。(a) 宇宙線電子・陽電子の加速源として注目されるパルサー星雲、(b) 銀河宇宙線の起源として有力視されている超新星残骸、(c) PeV を超えるエネルギーの宇宙線加速源の候補となる相対論的ジェット、などの研究テーマにおいて観測的・理論的研究を進めている。本年度は超新星残骸のX線観測の研究を重点的に実施した。主要な研究実績は次の通りである。
超新星残骸カシオペアAのチャンドラ衛星によるX線観測データを用いて、南東領域の爆発噴出物逆転層の起源についての研究を行った。X線ライン放射のドップラーシフトとイメージ解析による移動速度の測定を組み合わせ、Si/Oリッチ・イジェクタがFeリッチ・イジェクタに比べて速度が小さいことを示した。これは、爆発噴出物の逆転が超新星爆発の初期あるいは爆発時に起きたことを示唆し、重力崩壊型超新星爆発の中心領域の強い活動性を支持する結果となった。
また、カシオペアAの北東ジェットから安定チタンからのK-X線を発見した。ジェット領域から観測された元素組成は、不完全ケイ素燃焼によって説明可能であり、爆発時のジェットのパワーは弱く、超新星爆発の運動学の観点ではジェットは大きな役割を果たしていない可能性が考えられる結果となった。
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